Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Habenaria unknown hybrid

probably,

Pectabenaria Rapee Sagarik (Pecteilis susannae X Habenaria myriotricya=medusa)

X Hab.??

f:id:amitostigma:20190121112645j:plain

ラベル間違いで入荷した正体不明のハベナリア(おそらく交配種ラピー・サガリク)が自然結実していたので試しに播いてみた実生個体。

www.orchidroots.com

(追記:片親がmyriotrichaだとRapee Sagarik、medusaだとWow's White Fairiesとしてサンダーズリストに登録されている模様。しかし管理人にはmyriotricyaとmedusaの見分けがつかない。本当に別種なのか調べてみたが判然としない)

ハベナリア交配種は(ごく一部の例外を除いて)極端に稔性が低く、セルフ交配だとほぼ不稔になるので近くにあったハベナリアのどれかと虫媒交雑したのだと思うが、正確なところはよく判らない。

不稔に近い交配種でも正常稔性の原種個体の花粉をつけてやると、非常に低率ではあるがF2個体が作出できることがある。日本でも3元交配種がいくつか作出されているが、稔性が低いうえに着生蘭と比較すると種子量がものすごく少ないので、後代実生の量産が難しい。そのため数多くの実生の中から優良個体を選びながら交配育種していく、という洋蘭で常識的に行われている手法が、不可能とまでは言わないがあまり現実的ではない。

そうなると(言い方は悪いが)「交配してみたらこんなもんができました」という、血統書付きの犬のミックスを思いつきで作ってみました的な、ブリーダー視点で見た場合「目標が何も無い、好奇心で混ぜ合わせてみただけの交配」にならざるをえない。

というか、ミックス犬なら同種交配なので本気でやれば後代選別して新品種育成も可能である。むしろネコ科一代雑種のレオポンとかライガーを作って見世物にしています、野生種保存って何それ美味しいの、みたいな感じだろうか。

この個体は鑑賞価値から言うとかなりの優れ物ではあるのだが、個体寿命の短いハベナリアの場合、仮に良いものができても「はい枯れました終了です、実生もできないので次はありません」という流れになる。不稔でも栄養繁殖だけで半永続的に育てられるジャンルの交雑種(山野草系に限っても、良いものがかなりある)なら話はまた別なのだが、管理人としてはハベナリアに関しては交配種なんか作ってもなあ…と思ってしまうわけである。

そもそも今の時期に咲いている時点でおかしいと思っていただきたい。休眠してないのである。冬期最低25℃育成である。沖縄でも温室必須、こんなもんは熱帯アジアで育てるべきものである。本土で育てる?本土ならサギソウが育てられる気候なんだから素直にサギソウ育ててやがれこんちくしょー、無駄だ、こんなもん作っても無駄だ無駄だ無駄無駄無駄無駄だだだだだだだ、はーはーぜーぜー(興奮による息切れ)

最近は東南アジアでもいろいろな交配種を作っているようで、交配親を伏せて新種ハベナリア(正確には新種でなく新交配種と言うべきもの)として販売していたりする。ハベナリア交配種の大部分には母体として交配親和性が異様に高いHab.medusaが使用されているので、サギソウっぽい切れ込みのあるハベナリアを見た時にはメデューサ系交配種だと思って良いと思う。

Okinawan traditional Citron

left: Citrus unshiu / center: Citrus oto / right: Citrus depressa

f:id:amitostigma:20181220104516j:plain

左はウンシュウミカン、つまり普通の蜜柑。中央は沖縄在来種のオートー。右は本土でも知名度が上がってきたヒラミレモン、沖縄名シークヮーサー

オートーは沖縄在来柑橘の中では一番ポピュラーな種類で、完熟すると寝ぼけた味になるので青切りの状態で流通する。甘味はそれほど強くなく、フレッシュなさわやかさ、若い香りを楽しむ青い果実である。(←危ない表現)収穫量が少ないことと、他の柑橘類に打ち勝つほどのインパクトがあるわけではないので、流通はほぼ沖縄本島周辺に限定されているようだ。地元で根強く愛されているローカルフルーツである。

シークヮーサーはDNA解析によれば日本原産の柑橘類・タチバナと、未確定の不明柑橘類の雑種らしい。最近は各種の加工品が全国流通しているが、生果実の状態で出回るのは沖縄だけだろう。(2020年追記。最近では本土のスーパーにも流通している模様)

十数種の選別品種があるらしいが、一括してシークヮーサーであり、品種ごとに区別された流通はない。ちなみに画像のように黄色くなるまで熟したものは生食用で、「黄金(クガニー)」と呼ばれる。

系統によっては普通のミカン並みに甘くなるようだが、小さくて種が多いため果物としての流通は多くない。青果実は本土のスダチのように料理に使ったりもできる。食べ残した種子を埋めて発芽してきた苗を畑の隅に植え、家庭果樹として利用したりする事もある。

粗放的栽培で品種をあまり気にしていない場合も多く、生産者によって母樹の個体差がかなりある模様。

 

Citrus tarogayo

f:id:amitostigma:20181220104543j:plain

f:id:amitostigma:20181220104600j:plain

こちらは沖縄在来柑橘の中でも特に生産量が少ないものの一つ、タロガヨ。外見的には同じく在来品種のカーブチーとほとんど区別がつかないが、こちらのほうが果皮が薄い。

検索表はこちら。

甘味や酸味はオートーよりも淡白な感じだが、他の柑橘類のどれとも微妙に異なる独特の香気がある。それゆえごく一部ではあるが、タロガヨでなければ駄目だ!という固定ファンがいる模様。沖縄でも道の駅など、産地直売コーナーで少量販売されるだけなので、来沖された方が運良く見かけた時にはご賞味いただきたい。

こういう地元密着型の農産物は、栽培しているお年寄りが引退したとたんに消えてしまうこともある。少量でも良いから、今後も生き残っていってほしいと思う。

Paphiopedilum Leeanum?

in Okinawa island, Japan.

f:id:amitostigma:20181219101858j:plain

鉢植えのパフィオペディルム。沖縄本島中部にて。

パフィオは詳しくないので間違っていたらご指摘いただきたいが、交配種リーアナム(Paph.insigne X Paph.spicerianum)ではないかと思う。パフィオ最強健種と言われる、沖縄家庭園芸の友である。

沖縄では画像個体のように、植え替えもされず放任栽培で大株になって咲いているのをしばしば見かける。気候的には地植えにしても十分いけるはずだが、さすがに花壇に植えている人はあまりいないようだ。まあ、本土における並シュンランぐらいの感覚ではなかろうか。

洋ランマニアには見向きもされない「駄物」だが、「丈夫」という特性は園芸的にきわめて優れ物ではある。しかし植え替えなどの世話は面倒臭いという非園芸人にとっては、いつまでも枯れずに生きている鉢物など、むしろ邪魔物でしかない。シンビジウムの鉢物を、花が終わったあとも大事に世話している人はどれぐらいいるだろうか?

花壇植えで過酷な夏を灌水無しで平気で越し、ノーメンテナンスで毎年咲く、というぐらい丈夫ならまた話は別だが、ラン基準での「丈夫」は一般基準では中途半端すぎて何の意味も無い。植え替えしないと枯れるなら、花が終わった時点でとっとと枯れて目の前から消えてくれたほうがいい。

世間は「粗雑に扱ってもすぐには死なない」という、一時的耐久力以上のものは求めていない。「大事にすればこちらの愛情に応えて頑張ってくれて、共に長く生きていける」という細く長い性質は必要ではない。ブラック企業が使い捨て社員を求めるように、少しでも安い値段でどんどん使い潰せるのが「良い花」だ。求められているのは気を遣わなくてもどんどん花が咲いて3ヶ月で枯れるガーデンシクラメンであり、ちょっと気配りが必要だけれど50年生きてくれるシクラメン・ヘデリフォリウムでは無い。

良い悪いの問題ではなく、古今東西そういう価値観のほうが多数派で、疑問を呈するのは社会不適合者のみである。大量消費のメインストリームに棹さす者は流され、智に働こうとすれば角が立ち、意地を通せば窮屈だ。今に始まったことでもなく、とかくこの世は住みにくいのである。

Arundina hybrid

Aru.chinensis form X graminifolia alba.

f:id:amitostigma:20181126104648j:plain

ナリヤラン「雲南省矮性」×小型系統純白。

親個体については過去記事参照。

この個体はどちらかというと母親似。淡色×純白の実生のためか、セミアルバと言っても良い色調になった。

「ナリヤラン」は原産地が違うと著しい差異が認められることが珍しくない。系統ごとに草丈、花の大きさや色形・耐寒性・繁殖率・栽培難易度などが激しく異なり、学者によっては別種として学名をつけている場合もある。形態的にgraminifoliaの範疇であっても、別種とは言わないまでも亜種扱いで良いのでは、と思うような個体群が色々とあって、分類学的に細分と統合が繰り返されている。実物を見ないで文献だけ調べても、何が何だかよく判らない。

花命が短いため園芸的にはあまり重要視されていないランなので、地域変異をコレクションしたり交配育種したりしている人はほとんどいない。地域変異に関する資料は少なく、属の全容が混沌としている。

「ナリヤランの栽培は…」とか解説しているサイトは数多くあるが、その記述は多くの場合、特定の個体群(の中の一個体)を育てた経験談(あるいは実際には栽培しておらず、どこかから転載しているだけ)にすぎないことに注意していただきたい。本気で踏み込むならば、広義の「ナリヤラン」の栽培は単純に語れるようなものではない、とだけ申し上げておく。

Selaginella lutchuensis

in habitat. Okinawa island, Japan.

f:id:amitostigma:20181116113600j:plain

ヒメムカデクラマゴケ。沖縄本島中部にて。

 コケという名前だが、シダの一種。国産種で言うとイワヒバやカタヒバと同属だが、ものすごく小型で目立たない。分布域は鹿児島県南部以南(ネットでは八丈島にも分布しているという情報があるが、国内移入種か自然分布か不明)実質的に琉球列島固有と言っても良い植物なのでもっと注目されても良いような気がするが、生えていても盗掘されるどころか存在に気づいてもらえないぐらい影が薄い。ほとんどの人にとっては「名もないコケ」の一つにすぎないのではあるまいか。

 外国産のクラマゴケ類には観葉植物(セラジネラorセラギネラ)として販売普及している種類がいくつもあるし、近年ではインドネシアあたりの大型種がテラリウム栽培用として導入されてもいるが、本種は栽培している人をほとんど見かけない。よく見ればそれなりに魅力的な植物ではあるのだが小型で耐久力が乏しく、他種に比べて栽培が非常に面倒くさいのが園芸対象としては致命的である。

 イワヒバと違って植物体が乾燥するとあっさり死んでしまい、二度と復活しない。それゆえ栽培時には表土を絶対乾かさぬよう注意せねばならない。一方で表土に密着しているので過湿にすると簡単に腐って全滅する。それゆえ湿度は十分に、なおかつ適度な通風を保って蒸れぬよう注意し…と、繊細な地生蘭を扱うかのような管理が必要になる。

 そこまで手間をかけるなら、もっと観賞価値の高い植物はいくらでもある。苦労して育てあげたとしても地味な「コケ」にすぎないので誰も褒めてはくれない。よほどの物好きでなければ途中で育て続ける気力が尽きて終了だろう。

 まあ、こういうものは栽培しようと思うのが間違いだろう。野外でルーペで見て観察するに留めておいたほうが賢いような気がする。

Chloraea chrysantha in flask

seedlings

f:id:amitostigma:20181023110536j:plain

クロラエア・クリサンタの無菌実生苗。気温が下がってきて夏期休眠から目覚めた。親個体については過去記事参照。

 栽培・繁殖に関するデータはしっかり収集できたが、結論としてはこれも(管理人の基準では)栽培不可能種である。ネジバナのように短命で、実生増殖しないと維持が難しいランだからだ。だったら実生しようと口で言うのは簡単だが、別血統の入手が至難なので近交弱勢の壁を越えるのは容易でない。

 まあ、Chileflora社から10年に一度くらいリリースされる現地採取種子を何度も輸入して、多数の血統から構成された繁殖個体群を立ち上げ、血統を記録しながら定期的かつ計画的に交配し実生更新していく…というところまでやるなら継続的に維持することも可能ではあろう。しかし、5年に一度しか咲かない、咲いたら高率で枯れる、観賞価値もいまいち…という植物をそこまでして維持したいと思う栽培家はいない(断定)。

 ガチで取り組む気概が無く、一株だけのお気軽栽培で満足していれば長期的に見れば消費栽培しかできない。

 思うに栄養繁殖だけで普通に維持できるようなランなら、バイオ技術が存在しない時代から園芸化が進められ、すでに古典園芸化しているはずなのだ。さらにバイオ増殖が一般化してからも園芸化されていないランは、山採り流通・消費栽培の段階から先に進めるには労力がかかりすぎる・・つまり園芸普及させる上で何らかの致命的な問題がある植物だと考えたほうが良い。そういうものにあえて手を出すのは何もわかっていない馬鹿か、あるいは悪人か狂人だけだ。(管理人含む)

 ウチョウランエビネの栽培にしても、業者の実生増殖による量産体制(裏を返せば興味を持つ人が数多く現れたことによる、増殖業が商売として成り立つほどの継続した大量消費)が成立するまでは山盗り消費栽培の代表例であり、自然愛好家から憎悪されている行為だった。

 ウチョウランエビネの園芸化は業者実生による飽和供給・ウイルス未感染苗への入れ替え更新がなければ成立不可能。もし栄養繁殖だけで維持を試みていたとしたら供給量が乱穫消費に追いつかず、野生個体は趣味家にすべて食いつぶされて消滅していただろう。増殖業者が現れなかったら国内希少種(販売禁止)に指定され栽培対象にできなくなっていた可能性が高い。

 昭和時代の野生ラン趣味家なら絶対に野生植物の乱穫消費に加担しているはずだが、その頃の話は黒歴史として誰もが黙して語らない若い人達は、当時の趣味家がやらかした壊滅的な乱穫・殺戮栽培について古老から聞き出しておいたほうが良い。今おこなわれている山取り輸入栽培を考える時、反面教師になるはずだから。

 いずれにしても営利生産に不向きなランは個人栽培者がどれほど見事に育てても、いくら殖やしても最終的には「後継者がおらず、何一つ残らなかった」という結末を迎えてしまう。それは大局的に見ると「栽培できない」植物なのだと思う。

ダイサギソウは栽培不可能(異論は認めない)

Habenaria dentata ’Hakuho-zhishi'(White Phoenix)

from Okinawa island, Japan.

f:id:amitostigma:20181011162325j:plain

 ダイサギソウ「白鳳獅子」系。沖縄本島で見つかった変異系統。亡き師匠が発見者から譲り受けた個体がオリジンだそうで、管理人は師匠から種子を分けてもらって無菌培養で育成、その後も実生で定期的に継代しながら30年ほど育て続けている。

 サギソウの変異品種「飛翔」と同様、側愕片の下半分が唇弁化した系統で山野草用語では「獅子咲き」と呼ばれている。系統名は管理人の師匠が命名したもので、ダイサギソウの台湾名「白鳳蘭」の獅子咲き系統という意味だと聞いた記憶がある。

 変異の遺伝様式も「飛翔」と同じく優性遺伝で、他種のハベナリアと交雑した場合でも実生に獅子咲きが出現するので交配親としても興味深い。(なお、後述するがダイサギソウは無交配結実種なので交雑母体にできず、花粉親にのみ使える)

 

left:'Hakuho-zhishi'

right:Normal frower from Kyusyu island, Japan.

f:id:amitostigma:20181011162342j:plain

 左が「白鳳獅子」タイプ、右が鹿児島産の日本型標準花。こうやって並べれば違いが判ると思う。

 しかし普通の方はダイサギソウの標準的な花がどういうものなのかよく判っていないので、たまたま「白鳳獅子」タイプを入手しても、唯一無二の系統だという事にまったく気付かない。時には植物関係のプロが書いたネット記事で、普通のダイサギソウの見本写真として使用されていたりする

 ちなみにダイサギソウの花型は産出国によってかなり違いがある。日本本土から四国・九州までのダイサギソウはほぼ同一で混ぜてしまったら識別できないが、台湾以南の海外産ダイサギソウは花型だけで国産と見分けがつく。

 参考リンク、タイ産ダイサギソウ。産出国ごとに花型が異なる。

 奄美以南の系統は外見的には本土産と同じだが生育期間が2ヶ月ほど長く、本土ではきちんと温室栽培しないと生育サイクル完了前(果実が熟す前)に枯れてしまって、株が大きくならないし種子も得られない。(後述するが、個体寿命が短いので種子更新しないとほぼ確実に消費栽培になる)

 さらに熱帯アジア産ともなれば本土産とはまったくの別種だと考えたほうが良いくらい性質が異なっている。早春から加温して促成栽培しても、蕾が出てくるのは晩秋になる。そのあと開花して休眠するまで、ずっと生育適温(25℃以上)を保ち続けなければ生育サイクルが完結しない。本土の家庭用温室だと採種どころか花を見る事すら難しい。

 バンダのような周年生育種であれば、温度不足=2年で1サイクル分の生長でも隔年開花になるだけで済む場合「も」ある。しかし落葉休眠期のある熱帯植物は、真夏が生育最盛期になるよう温度調整してサイクルを合わせてやらないと生育がおかしくなる=そのうち枯れる。

 そういうわけで南方地域産ダイサギソウは栽培上は国産種と似て否なるものであり、はっきり言って「初見殺し」である。産地不明の苗は、どれほど安くても初心者は入手しないほうが良い。

 

seedling

f:id:amitostigma:20181011162405j:plain

「白鳳獅子」系実生、2018年フラスコ出し初花。大部分はまだ未開花。

 ダイサギソウは株が老化してくると分球しなくなり、ウイルス耐性も低いので同一個体の長期維持は難しい。本土産個体を20年以上育てているという方もおられるようなので育て方によってはそれなりに長生きすることもあるようだが、管理人の栽培だと頑張っても同一個体は10年持たない。安全率を考えて最低でも5年に一度くらいは実生し、常に3世代くらい同時に育て、古くなってウイルスに感染した個体を若い個体と入れ替えながら系統維持している。

 ダイサギソウは近交弱勢の激しいハベナリア属としては例外的に、一株だけで自動結実して無交配で勝手に種子ができてしまう性質をもつ。そのため系統維持する場合に交配親として多数の個体を維持しつづける必要が無い。

 無菌培養が容易だが(きちんと完熟種子が得られるように管理していれば)何もしなくてもこぼれた種が飛んであちこちの鉢に自然実生が出てくる。栽培場での自然実生発生率はネジバナの次くらいに高い。(ただし「段ボール蒔き」は湧いてくる菌が合わないようで、ほとんど発芽しない)それゆえ日本で入手可能なハベナリアの中では最も系統維持しやすい種類の一つである。

(注:「長期維持がクソ面倒臭いハベナリア類の中では」の話である。本土産であっても花壇に植えたり他種との寄せ植え管理で適当に育てて長生きするような植物ではない。一般論としては「カタギの人間が手ェ出して良いもんじゃねぇんだよ、痛い目に遭わないうちにとっとと帰れ」と冷たい態度で追い返すぐらいの栽培難度である)

 

seedling

f:id:amitostigma:20181011162426j:plain

 実生初花。

 希少な系統なので自分一人で育てていて絶種させてはいけないと思い、殖やした苗は積極的に草友に譲ることにした。とはいっても栽培が易しいとは言い難い草なので渡す相手はそれなりに選ばせてもらうことにし、植物園などにも渡しておいた。入手してからの20年で、のべ100人ほどに配っただろうか。まあ全員が栽培に成功することは期待していなかったが、3人ぐらい真面目に維持してくれる人がいれば絶種の危険は大幅に減るだろうという目論見である。「この草は実生更新が必須ですから、必ず実生を試みてください」と全員に言い添えるのも忘れなかった。

 結果から言うと維持してくれた方は一人もいなかった。植物園は初年度に栽培を失敗した。ある程度の年月、栽培できていた方は少なからずいたのだが真面目に殖やそうとした方は一人もいなかった。無菌培養技術のある方も、漫然と育てるだけで播種しようとしなかった。追加配布を中止して10年。現在では管理人が配布した個体はすべて消滅してしまったようだ。

 まあ、思うところは色々あるが語るのはやめておく。判ったことは自分がいくら一所懸命に殖やしても、維持する事に興味のない趣味家が増殖分を全部食いつぶしてしまうので最後には何も残らないという冷徹な現実だった。

 結論としてはダイサギソウは個人がある程度の年月、保持していくことは不可能ではないが、世代を超えて栽培下で残していくことはできない。そういうものは管理人の基準では栽培不可能種である。この結論に対して異論を認めるつもりはない。

*他のダイサギソウ関連記事は最上段にあるHabenariaタグをクリックしてください。

ダイサギソウ相次ぎ盗掘か – 奄美新聞