Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

室内LED栽培

過去画像整理。

以前、まとまった数を栽培していた時の、栽培テスト画像。

 日光がほとんど差し込まず、室内散乱光のみの場所に置いた棚にアクアリウム用のLED照明を設置して栽培してみた。覚え書きを遺していく。

最大光量で15時間点灯しつづけて栽培した場合、オキナワチドリは屋外自然光と有意な栽培差は出なかった。

・ただし画像のように、照射中央域の高光量場所ではまったく徒長せず固く締まるが、少しはずれた場所に置くと背丈が伸びてくる感じだった。外光もある程度取り入れて照射量を調節するのがベストのようである。

・ほとんどのランは日照時間で開花が決まる長日(短日)植物ではない。自然日長を超えた日照時間にしても問題は無い。

・ただし光源からの発熱の影響は大きいので、そこはまた別に考慮が必要。

・沖縄の冬は天候が不安定で、毎日のように小雨が降るかと思えば、いきなり晴れて気温が急上昇したりする。台風並みの暴風が吹き荒れることもあって、屋外栽培はトラブルが多い。設備費や光熱費を考えず、管理難度だけを問題にするなら(専用蘭舎の無い一般家庭では)室内でLED栽培したほうが手間がかからないと思う。

 

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・2023年の異常高温のような気候が常時続くようになれば、東北のアツモリソウ栽培、関東以南のウチョウラン・イワチドリやサギソウなどの栽培も自然気候下では長期維持が難しくなってくる可能性もある。温帯起源の地生種の生育域外保全は、室内での気候調整栽培が不可避になってくるかもしれない。

・オキナワチドリの場合は夏期の高温自体はそれほど問題にならないが、冬の生育適温期間の短縮は作落ちに直結する。

沖縄本島はオキナワチドリ分布域のほぼ南限で、生育適温よりもやや気温が高い。今後の気候変動でオキナワチドリが沖縄の自然気候下で栽培が難しくなってくる可能性はゼロではない。関東以北がオキナワチドリの栽培適地になったりするかもしれない。

 

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・5年前には赤と青のLEDだけを使った、演色性の悪い怪しい光色の製品しか探しても見つからなかった。ところが今では4色以上の発光素子を使った育成灯が主流になってきて、毎年のようにモデルチェンジ&低価格化&高性能化されつつある。

・その一方、LED植物栽培に関する一次情報がきわめて少ない。というより機材が発展途上、かつ日進月歩なので昨年度の主要モデルが今年は型落ち・生産中止になっていたりする。数年かけて使用結果が判ってくる頃には、まとめ情報を公開する意味が無くなっている。

・一次情報でも、コイツただの消費栽培じゃねーの? というレベルの栽培者だと情報源として信用ならない。医療情報と同じで、知識の足りない人が発信しているガセ情報が一番始末が悪い。(管理人情報がガセでないとは言っていない)

・基本的には自分で実験して真偽を確かめるしかない。

・光量はスマホアプリでもある程度まで調べられるが、分光(スペクトル)分布は個人で測定するのが大変(測定機材の値段の問題なので、やること自体は簡単)なので、カタログ情報に大嘘が書いてあっても一般ユーザーには判らない。

・使用開始直後と1年後のスペックも同じではないので、1年だけの使用経験ではうかつな事が言えない。

・中国製のLED製品は安いが、初期不良が多いようだ。口コミを見ると最初から点灯しなかった、3日で壊れた、いや2年たったが普通に使えている、等々いろいろ書き込まれている。

・管理人は安いLEDを10基ほどまとめて買って1年間使ってみたが、3基は3か月前後でACアダプターが使用不能になった。(過熱停止時の復帰回路が無い? 本体には問題なかったが、部品別売りがないので丸ごと交換する事になった)

・爆発炎上したという口コミは確認されていないので、火災の危険は高くないとは思うが、海外製品を過信してはいけない。使用環境と放熱状況には十分な注意が必要と思われる。ACアダプターを送風冷却できればベストである。

・園芸雑誌などで紹介されるLEDは大型植物栽培用の、高所から大光量を広範囲に照射する機種が多い。高級機種には紫外線LED素子なども組み入れたフルスペクトル型などもあるが、強光型は離れた距離からの使用が前提なので、近距離で使うと葉焼けする。

・小型植物にはアクアリウム用LEDのほうが使い勝手が良いが、植物種とLED機種の組み合わせによっては、生長は順調に見えても地下部の肥大が極端に悪くなることがある。

・丈夫な草であれば普通の白色LED蛍光灯でも問題なく育つが、植物種によっては「植物育成LED」でも光質が合わないと枯れることがある模様。

・というか、その「植物育成用」って本当に植物育成実験してるの? 詐欺商品じゃないって証拠は? 

・複数社の機材を併用すると(複数用土を混合して使うのと同じように)全体としての性能が安定して、重大なトラブルが発生しにくくなる印象がある。しかしあくまで印象であって、確証に足るデータは無い。

・測定機材が無いと数字でデータが残せないし、数字で記録しても計測機器を持っていない栽培者には再現できない。というか太陽光と違って、同じ機材が入手できなければそもそも同一光質が得られない。同一機種を使っても照射距離や積算温度、積算照射量などの各種変数が多すぎて、個人の使用経験だけでは情報が足りない。

あと、植物育成蛍光灯は全周に散乱光を発しているのに対し、LEDは直進光を発しているので、ルーメン値は大きくても空間全体の明るさは低くなる。

・つまり、LEDは短距離で直射した場合、葉が焼けるほど光量があっても、葉裏などの影になる場所では著しく光が不足する。

・LEDと植物の間に透明プラ板を置いて光を散乱させたりすると、ルーメン的には減少しているはずなのにルクス実測ではむしろ明るくなっていたりする。懐中電灯だけでは暗い時に、それをランプシェードの中に入れると部屋全体が明るくなるのと同じ理屈である。

・水中植物の育成に使う場合、何もしなくても水で光が散乱するため、アクアリウム系では空中使用時の散乱光の重要性についてまったく知られていない。

この情報は最近になってテラリウム屋の口コミで知られはじめているが、どうすれば適切な散乱光が得られるかは試行錯誤の状態を脱していない。

・他人との情報交換も、変数が多すぎて比較するのに限界がある。現状ではメーカーですら手探り状態の模様。

・とはいえLEDというアイテムは、栽培者にとって非常に利用価値が高いと思われる。今後の集合知の醸成に期待したい。醸成される日が来るかどうかは知らん。