Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Selaginella lutchuensis

in habitat. Okinawa island, Japan.

f:id:amitostigma:20181116113600j:plain

ヒメムカデクラマゴケ。沖縄本島中部にて。

 コケという名前だが、シダの一種。国産種で言うとイワヒバやカタヒバと同属だが、ものすごく小型で目立たない。分布域は鹿児島県南部以南(ネットでは八丈島にも分布しているという情報があるが、国内移入種か自然分布か不明)実質的に琉球列島固有と言っても良い植物なのでもっと注目されても良いような気がするが、生えていても盗掘されるどころか存在に気づいてもらえないぐらい影が薄い。ほとんどの人にとっては「名もないコケ」の一つにすぎないのではあるまいか。

 外国産のクラマゴケ類には観葉植物(セラジネラorセラギネラ)として販売普及している種類がいくつもあるし、近年ではインドネシアあたりの大型種がテラリウム栽培用として導入されてもいるが、本種は栽培している人をほとんど見かけない。よく見ればそれなりに魅力的な植物ではあるのだが小型で耐久力が乏しく、他種に比べて栽培が非常に面倒くさいのが園芸対象としては致命的である。

 イワヒバと違って植物体が乾燥するとあっさり死んでしまい、二度と復活しない。それゆえ栽培時には表土を絶対乾かさぬよう注意せねばならない。一方で表土に密着しているので過湿にすると簡単に腐って全滅する。それゆえ湿度は十分に、なおかつ適度な通風を保って蒸れぬよう注意し…と、繊細な地生蘭を扱うかのような管理が必要になる。

 そこまで手間をかけるなら、もっと観賞価値の高い植物はいくらでもある。苦労して育てあげたとしても地味な「コケ」にすぎないので誰も褒めてはくれない。よほどの物好きでなければ途中で育て続ける気力が尽きて終了だろう。

 まあ、こういうものは栽培しようと思うのが間違いだろう。野外でルーペで見て観察するに留めておいたほうが賢いような気がする。