Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Aeginetia indica

in Okinawa island.

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ナンバンギセル沖縄本島にて。

草刈りしたあとにススキの根元から咲いていた。葉緑素を持たない完全寄生植物で、ススキなどの大型イネ科の根から養分を吸収して開花する。

あらかじめススキを鉢植えにしておいて、その根元に種子を播けば栽培下で開花させることが可能。鉢物としても出回ることがあり、ネット通販で入手できる。

ただ、開花時期以外は地下生活しているので、蕾が出ている状態でないと生きているのか死んでいるのかわからない。開花結実すると枯死してしまうので毎年種子を播かないと絶えてしまう(実際には種子は何年も地下で休眠しているようなので、一度播くと複数年は生えてくるようだが)こともあり、長期維持は意外と面倒臭い。

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濃色、口紅咲き、純白花などの変異系統も選別されているようだが、真面目に保存栽培している人が限られるので変異コレクションするのは難しいようである。

 

Farfugium japonicum var. luchuense

from Okinawa island, Japan.

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リュウキュウツワブキ奄美大島沖縄本島西表島に分布するツワブキの渓流型変種。つまり増水時に葉がちぎれたりしないように、葉型が小さく細くなったツワブキである。

斑入りや葉変わりなどの選別個体が栄養繁殖されて流通している。ただし専門コレクターがあまりいない植物なので、まとまった品種を一堂に見る機会はほとんど無い。

普通のツワブキと連続した変異があり、交配すると中間型が出てくるそうなので同種と考えるべきかもしれない。が、自生環境が渓流だと大葉種が流され、通常の場所だと小型種が淘汰されてしまうので、その結果として別物に進化しつつあるらしい。

キク科の通例通り自家不和合で、育種が面倒なので意図的に新品種を作っている方はほとんどいない模様。

 

Far.japonicum  #1 in Okinawa island

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こちらは参考までに普通のツワブキ。ちょっと丸弁。

 

Far.japonicum #2 in Okinawa island.

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 こちらも普通のツワブキ。やや細弁。個体差が大きいが、花物としてはあまり注目されていないようである。

ヨナグニイソノギク(ヨナクニイソノギク)

Aster asagrayi var.warkeri

from Yonaguni island, Okinawa, Japan.

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 ヨナグニイソノギク。(環境庁の資料ではヨナ「ク」ニイソノギクだが、現地の地名発音がヨナグニなので当ブログでは意図的にヨナグニと書いている。)

 平成31年度に特定第一種国内希少野生動植物種に指定されたため (栽培する事に規制は無いが)手に入れる場合は申請許可済の業者から入手しないと違法になる。

 画像個体は管理人がまだ若かった頃に種子を入手して、自宅で継代維持しているもの。法律施行前の入手なので法的な問題は無いが、許可業者以外に譲渡すれば違法になる。

 

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交配して種子を採る。採り播きでも良いが、危険分散のため一部の種子は取り分けて保存しておいたほうが良い。採種後すぐに冷蔵庫に入れておけば、2年以上経った種子でも発芽する。(3年目までは実用上問題ない程度に発芽する事を確認している)

 

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 発芽は遅く不均一で、播種後1ヶ月ぐらいでポツポツと芽が出てくる。病害に弱いので、有機物を含まない清潔な用土に播種し、発芽後に園芸用殺菌剤を散布しておく。

 キク科としては根が虚弱で移植はあまり好まない。小苗のうちに注意深く小分けして、育ってきたら鉢土ごと大きな鉢に移していくほうが安全。量産するならプラグ苗にするのがベストだろうが、需要は少ないと思うので蒔く量は最小限に留めている。

 なお、近交弱勢をおこさずに他株受粉を続けられる最小個体数は不明。おそらく2株だけでは足りないと思われるので、管理人は複数年度の種子を蒔くことによって、遺伝子の多様性を維持する事を試みている。

 

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 余剰苗は認可業者に押し付ける予定。油断すると根腐れや病虫害でバタバタと枯れるので「キク科としては」かなり栽培困難な部類だと思う。

  これが民間でできる生息域外保全・・などとSNSなどでドヤれば騙される馬鹿が一定数いるだろう。言っておくが、趣味家の栽培がこの種の保護に役立つ可能性はゼロである。なぜかと言えばヨナグニイソノギクは栽培不可能種だからである。

 まあ管理人は殖やしている。が、それは採算度外視で、思い入れだけで面倒臭い維持栽培を毎年継続している狂人だからできる話であって、普通の人には一時的栽培しかできない。管理人から誰かに保存栽培がバトンタッチされる可能性は無いので、遅かれ早かれ絶える運命にある。つまり長期的視点では消費栽培をしている。

 この種は短命な多年草で、開花すると高率で枯れる。まだ元気なうちに挿し芽などで未開花苗を作っておけば維持できない事も無いが、「キク科としては」発根率が低いので本気にならないと栄養繁殖苗が作れない。

 根を切ると回復に時間がかかるが、一方で根詰まりさせるとすぐ枯れる。同一個体を維持したければ生育適期に必ず移植、あるいは挿し芽をしておくことが必要不可欠。

 手入れをさぼったまま夏・冬に突入して状態が悪くなると、あわてて移植しても回復・発根せずそのまま枯れてしまう。こまめに世話できれば難物ではないが、少し目を離すと気がついた時には回復不能になっている。

 親株はそこそこの大きさになり水分の吸収・蒸散が激しい(それでいて過湿には弱いので腰水などは避けたい)ので、それなりの大きさの鉢か、あるいはプランター栽培でないと育成しづらい。つまり栽培にも場所をとる。

 霜に当てると枯れるので、本土であれば冬期にある程度の保温が必須。しかしビニールハウスにプランターをいくつも持ちこんでまで栽培したいような草ではないので、手を出しても冬の置き場所に困り、翌年にはそのまま管理放棄するのが普通である。

 沖縄であれば露地で大量栽培も可能だが、前述のようにこまめに植え替えしないとすぐ絶える。与那国島でも植栽で栽培を試みた例があるが、自然更新で苗が育つような場所ではなかったため1年で消滅した。

 弱った親株は捨てて種子で更新するほうが簡単だが、自家不和合、つまり一株だけでは種子ができないので採種するためには複数株を栽培しつづける必要がある。

 さらに嫌なのが同属他種とものすごく簡単に交雑すること。沖縄本島のイソノギク自生地の近在で栽培したら虫媒で野生個体群に遺伝子汚染をひきおこしてしまう。(10kmぐらいは花粉媒介されるとも)

 そういう場所から離して栽培していたとしても、圃場に同属のダルマギクとかユウゼンギクとか栽培していたら採種更新するのはアウト。もし栽培するなら農業用防虫ネットで厳重に隔離するしかない。

 アスター属で本種より鑑賞的に優れた種類はいくらでもあるので、そういうものを無視して本種のみを苦労しながら維持栽培する、などという行為は客観的に見て異常者の所業である。

 よって本種は現実的には栽培不可能。地域によっては栽培禁忌ですらある。

 野生植物には、こういう感じで「苗をもらってきて一時的に育てるのは簡単だが、真面目に長期維持しようとすると超絶に面倒臭い」という植物が稀ではない。

 園芸種でも、たとえばパンジー。苗を植えて花を楽しむだけなら栽培スキルもその種類に関する知識背景も不要。園芸ジャンルの中では入門種中の入門種とされている。だが、業者と無関係に自分一人で10年維持しろ、と言われたらあなたには可能だろうか?

 パンジーは耐暑性が乏しく、日本のほとんどの地域では1年草扱いになる。つまり種子が採れなければ維持できない。パンジーは1果実の種子量が少ないし、完熟するとはじけてどこかに消えてしまう。交配する労力を抜きにして、きちんと採種するという作業だけでも実際にやってみるとものすごく面倒くさい。

 しかもパンジーは他花受粉させないと弱化してくる。純系ではなく遺伝的に雑駁なので、そういうもの同士を自然交雑させたら観賞価値の低い妙な花色の個体がゾロゾロ出てくる。狙って人工交配して採種、育苗、実生選別して次世代の親株を選抜して・・というのを業者任せにせず自分でやったら時間的・労力的、何よりも栽培面積的に破綻確定である。(なお、日本国内にはパンジーを個人育種して名花を作出している方々もおられるが、パンジー専門でガチに取り組んでいる事例なので例外とする)

 要するに「パンジーが簡単」というのは面倒な部分を育成業者に丸投げして、美味しい部分だけをつまみ食いしているから成り立つ話である。自分一人で10年維持、という条件なら寒蘭のほうがはるかに簡単だろう。

 そういうバックヤードの苦労をな~~~んにも考えずに「素人はパンジーでも育てていればいい」とか、寝言は寝て言えという感じである。本来ならば「素人は寒蘭でも育てていろ」が正しかろう。

 「本来は難しい」部分を毒抜きした上澄みだけが園芸雑誌に載る。それを見て「消費者」が飛びつき業者の栄養分になる。まあ商業生産者がバックに控えている一般園芸は消費栽培で何一つ問題はないのだが、山盗り非自家生産の苗を扱っている業者/購入者が、面倒な部分が何も見えていないまま「栽培できます/してます」と言っているのを見た時には辛いものがある。

 結局のところ、希少種は全部法律で縛って栽培に規制をかけていくしか無いのだろうと思う。

オキナワチドリの球根

Amitostigma lepidumAmitostigma lepidum tubers.

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 オキナワチドリ交配実生の球根。

 交配実生は栽培に適した個体が選別されているので、肥培すれば肥培しただけ素直に大きくなり増殖も良い。沖縄本島産の野生個体だといくら頑張って育てても球根はせいぜい大粒ピーナツ程度、一般的な個体だと増殖も悪いので少しでも油断すると作落ちして消えて無くなる。

 なので栽培するなら交配実生を購入しましょう・・と強く主張しつづけているのだが、オキナワチドリ栽培に興味を持つ方はほぼ例外無く野生個体のほうに手を出す。

 思うに、野生蘭愛好家というのはただのレア物コレクターであり植物愛好家ではない。千人切りを目指している遊び人であって、一生を共にする相手は最初から求めていない。

 まぁ本気になったらなったで、常人には付き合いきれない相手だと悟る事になる。ほとんどの地生蘭は「普通の育て方」だと消費栽培しかできない。うっかり手を出した時点で負けである。

何これ

unknown

in Yomitan village, Okinawa island.

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ススキっぽい何か。沖縄本島読谷村にて撮影。

印象としてはススキの種子が穂から脱落せずに発芽している、という感じなのだが、穂の形自体が変形しているようにも見える。あるいはヤグラネギのススキ版というか。

ヤグラススキってあったっけ?と思って検索したけれど該当無し。生理障害なのか変異個体なのか何かの病気なのか、管理人の知識では鑑別できず。

サイズ的にも鑑賞的にも栽培したい感じではなかったので、撮影だけして帰ってきたのだが、これが何者かご存知の方がいらしたらご教授いただきたい。

Habenaria fumistrata?

from Thai.

ハベナリア・フミストラータとして入手したラン。タイ産。

学名は Habenaria diphylla が正しい可能性もあるが、近似種が多くて確定できない。詳細は下記(英語)参照。

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上画像とは別の株。ヒゲ(唇弁の側裂片)の角度や長さには個体差がある。

さらに別個体、これはヒゲが長め。

ヒゲがもっと長いタイプ(別種?)もあるようだが、管理人はそちらはまだ実物を見たことがない。

この種群(複数種を含む)は需要が乏しいので、洋蘭業者も輸入する気にならない模様。管理人は国内で売っているのを一度しか見たことが無い。

というか一般基準で言うと栽培不可能種に属するので、見かけても手を出さないほうが無難。まあ「手を出すな」と忠告するまでもなく、こういうものを苦労してまで育てたがる人はほとんどいないだろう。

ウチョウラン並みに腐りやすく、なおかつ熱帯ハベナリアの寒がる・殖えにくい・個体寿命がある・実生すると近交弱勢が激しい・・等々の欠点を一通り持っている。ウイルスに対してそれほど弱くないのだけが救いだが、普通の人間なら管理が面倒すぎて栽培放棄すると思う。

ハベナリア類を長期維持するには実生更新が必須になるが、近交弱勢を避けるためには別個体と交配しなければならない。こういう金銭価値も鑑賞価値も乏しいランを、たまたま見つけた時にまとめて全部買いしめて、シブリング交配して継代しているような人がいたら、控えめに言って頭がおかしい。

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栄養要求性がウチョウラン・サギソウ・エビネ等とは異なるので、無菌播種培地は本種に合わせて特殊な調合にする必要がある。そういう変態知識を事前に知っていなければ、培養しても育たずに枯れる。

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草姿がコンパクトで山野草として見た場合は渋い草ではあるが、一般的な美意識から言えば雑草の部類。

しかしアップで見ればターンエーか白ひげ 捨てがたい造形美だと思う。・・「普通の人は雑草をアップで見て喜ぶ趣味は無い」という指摘は無しでお願いします。

Luffa cylindrica

cultivate in Okinawa island, Japan.

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サラダヘチマ。「生食できるヘチマ」というふれこみで栽培されている品種。普通のヘチマの果実よりも太短い。

ヘチマを食べる、というと本土の方は怪訝な顔をされるが、沖縄や東南アジア諸国ではスーパーでもごく普通に売っている食用野菜である。原種に近いものは苦味が強くて食べられないが、食用として品種改良されたものはほぼ苦味が無く、新鮮なうちに加熱調理すると、甘味のある汁がたっぷりと出てとろりと柔らかくなる。若干の青臭さ、土臭さがあるので沖縄県民でも好き嫌いのある野菜だが、管理人は好物である。

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サラダヘチマは種子ができる前の若い果実をサラダにする。水茄子のヘチマ版のようなものである。サクサクとした歯触りが好ましいが、生食だとサポニン系のいがらっぽい風味がわずかに感じられる。けっして不味くはないのだが、皮をむいてそのまま丸かじりしたいほど美味だとも言い難い。(*個人の感想です)まあ、味付け次第でいろいろ印象が変わってきそうな食材ではある。

ともあれ、本土ではヘチマを実食する機会は乏しいと思う。ご来沖いただいた際にはぜひご賞味いただきたい。

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季節メニューだが、某回転寿司には茹でヘチマ握り島味噌ダレなどというものもある。一見ジョーク的存在に思えるが、意外と美味かったりする(笑)