Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Calanthe X dominyi ?

 in Orchid show

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 夏咲きエビネ系の何か。某所の蘭展示会にて。コロナウイルスの影響で、展示会というものが存続できるかどうか怪しい。

 画像は俗に「琉球エビネ」という流通名で呼ばれている植物。花色が良いが耐暑性に乏しいオナガエビネと、耐暑性のあるツルラン、その他の近縁種群との交雑種群。本土の春咲きエビネと同様、外見から正確な血統を識別することは不可能。詳細についてはよそのサイトに丸投げしておく。

 エビネ(夏咲き)の特徴と種類 - 玲儿 - Garden Manage

 画像個体は、外見的には原種リュウキュウエビネCalanthe okinawensis(現在はオナガエビネ=Cal.sylvaticaと統合されている模様)と呼ばれている系統に近い。こういう深い紫色のものは希少で、個体名をつけても良いハイレベルな花である。

 原種(異論もある)のリュウキュウエビネはシマイワウチワなどと同様、はるか昔に沖縄が陸塊の山頂部分だった時代の遺存植物であるらしい。つまり沖縄産と言っても、高地性植物が涼しい森の奥でかろうじて生きのびてきたものなので耐暑性が無い。性質も虚弱で常人には栽培不可能なのだが、山盗りされまくって野生ではほぼ絶滅状態である。人手に渡ったものはすべて消費され、現在では実物を見る機会は皆無に近い。

 低地性のツルランの血が混じっている「琉球エビネ」(商業流通名であれば比較的丈夫なので、栽培品として残っているものもある。が、ウイルス耐性に乏しいため長期栽培個体は何らかのウイルスに感染しているのが普通である。元気に育っている状態だと外見的にわからなかったりするが、株分けして体力を消耗させたり、高温や乾燥にさらしたり、所有者が変わって何らかのストレスが加わった時にはウイルス量が急増して発病し感染源となる。そのため古い個体はうかつに入手できない。隔離栽培して異系統と交配し次世代を育成しなおす技術があるなら話は別だが、種子から育成できるレベルまで達していない初級者には入手も栽培も推奨しかねる。

 過去には銘品を交配親にして実生増殖した健全な苗を供給していた業者があったが、現在は撤退してしまったようだ。そのため最近は「琉球エビネ」のまともな苗がほとんど流通していない。

 現在もホームセンターに苗は並んでいるが、安かろう悪かろう的な鑑賞的に微妙な個体が多い。それに加えて露骨なウイルス病徴が出ている売品も珍しくない。たとえるならばペットショップにネコエイズ感染して鼻水をたらしている雑種猫しか置いていない、というような状況になってしまっている。しかし売るほうも買うほうも知識が無いので、それを気にしている様子はない。もはや銘品級で健全な苗は幻の存在となり、「栽培におすすめ」だった時代は遠くに去ってしまった

 一方、台湾では「琉球エビネ」やツルランの各種変異個体を園芸資源&観光資源として真面目に研究している施設もあるようだ。

台灣原生根節蘭北橫沿線綻放 避暑好去處-根節蘭-農業知識入口網

 日本では研究も生産も途絶して貴重な銘品はウイルスまみれだが、それが問題視されている様子はない。まあ今の日本はランに限らず即金にならない事は何も研究しない、教育しない、伝承しない(というか、している余裕が無いほど何もかもが削られている)ので、今後も再興は期待できそうもない。

2021年追記:Calanthe X dominyi はCal.sylvaticaとツルランの交雑種のことなので、オナガエビネの交雑個体にはこの学名表記は使うべきではないという記事があった。

参考↓

・・が、けんたき氏から「オナガエビネキューガーデンの見解でも現時点では)Cal.sylvaticaの同種異名扱いなので、ユウヅルもsylvatica交雑種Cal.X dominyiと書いて良いのでは」というようなご指摘をいただいた。(コメント欄参照)

 サンダーズリストは園芸表記の基準となってはいるが、確かに学名などが変更になっていたりして現時点の学術記載と合わなくなっている部分も認められる。分類学は毎年のように見直しがあるので混沌を極め、素人にはついていけない世界である。(汗)

・・というか、天然状態で浸透交雑が認められるエビネ類の場合、交配記録がある人工交配個体でも使用された親個体が純血かどうか実際にはよく判っていない場合も多い。それゆえ交配名表記があっても、それが厳密な意味で正しいかどうかは疑問である。

 というわけで記事タイトルは素直にunknown Calantheにしろという話であった。今後はそうします。(反省)

某科某種

  流通時の学名で検索すると、花はほぼ同じだが糸のように細い葉の系統の画像も出てきて混乱する。これらが同一種内の変異なのか、どちらかが未記載の別種なのか今のところ謎である。とりあえず不明種として同定は保留。

画像は3.5号鉢。「テコフィレアの純白花」とか言ったら信じる人がいそう。

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 言うまでもなく写真としては問題外。夜咲きの白い花は単独光源で花にピントを合わせるとそれ以外が全部飛ぶ。判ってはいるがライティングしてまで撮影する気力は無い。

 画像の系統に関しては沖縄の気候であれば栽培に難しい点は無く、毎年2倍に増殖するので苗がたまに流通することがある。花付きは良くシーズン中に繰り返し咲くのだが、真夜中に咲いて朝になる前にしぼんで溶けてしまう。そのため一般的な鉢物として商業生産される可能性はゼロだと思われる。

 ちなみに蝶型の4枚の「花弁」は2本のオシベが変形して唇弁状になったものだそうな。

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 葉にピントを合わせると花が飛ぶ。対処方法はあるのだろうが、調べる気力が無い。

 

*2022年追記。

デジカメを変えてみた。

上画像と撮影場所や光源などはまったく変えておらず、管理人自身は何一つ工夫せずに完全フルオートおまかせ撮影。

たぶん最新機種で撮ったらもっと凄いのだろうが、これでも年寄りにとっては驚きの性能である。わしが若い頃にはデジカメなどというものは無くて(昔話が延々と続く)

Okinawan lacquerware

made in Okinawa island, Japan. 20C.

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琉球漆器、堆錦(ついきん)飾り皿。

現在は生産されていない図案で、おそらく昭和期のものだと思われるが未鑑定。

 

東洋蘭であることは間違いないが、アバウトな絵柄なので種名はよく判らない。

葉が小さくて花が大きいので、どちらかというと姫アマナラン(台湾高地産と言われる超小型種)のような感じである。

New Book

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沖縄産イネ科ハンドブック。欲しい方は絶対欲しい、いらない方はタダでもいらないという二極分化した反応の出る書籍。管理人は前者。

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いやもう見るからにつまらない。誰が買うんだこんな本。誰得っていうか俺得。こういうニッチな本が出てしまうところが日本すげー。

前書きにある著者のイネ科に対する愛の叫びはたいへんよく理解できる。まあ同調するのは少々難しいのだけれど。

Spiranthes sinensis var.sinensis

from Okinawa island, Japan

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 ナンゴクネジバナ沖縄本島では本土のネジバナと同様、芝生に生えている。一般的には花弁の先端のみがほんのり赤く染まる、いわゆる「口紅咲き」の個体が多いが、画像個体は比較的濃色で本土のネジバナとほとんど区別がつかない。

 違いは春咲きである事と、花茎が無毛である事だが、まあ画像だけ見て判る人はほとんどいないだろう。ちなみに沖縄本島では単に「ネジバナ」と呼ばれている。

  現在、我々は歴史の転換点に立ち会っている時期なのだろうが、これから世界がどのように変わっていくのか見当がつかない。もし叶うのであれば、あと10年くらい生き延びて変容を見てみたいとは思うのだが。 

Amitostigma lepidum

2020 seedling

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オキナワチドリ実生。

市販の実生苗には、こういう妙な個体も混入していた。

そういうのを探してきて、交配親にして遊んでみるのは楽しかった。

 

過去形である。市中にある実生苗はそのうち消える。維持増殖していた人はもういない。