Lygodium japonicum var. microstachyum

in habitat. Okinawa island, Japan.

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ナガバカニクサ。沖縄本島にて。

本土に分布するカニクサの変種で、頂裂片がカニクサに比べてやや長い。葉の光沢が若干強いのでテリバカニクサの別名があるという。ツル性で他の植物にからみつきながら伸び、よく育つと2m以上になることもある。

 

Sporophyll

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こちらは胞子葉。形状がかなり異なり、知らないと別種のシダに見える。

沖縄本島ではほとんど注目されていない植物だが、八重山諸島だとカニクサ類は祭礼の魔除けとして使われる。有名なところでは西表島の節祭(シチ:本土の節分に相当する年改めの日に行われる大祭。旧暦10月前後の己亥(つちのとい)の日からの3日間、2017年は11月8~10日)に必須とされ、いわば本土の節分におけるヒイラギのような存在。方言名もシチ・カッツァ(節祭蔓)である。具体的にはリンク先ページ中段を参照。

www.chie-project.jp

奄美諸島でも神女が身を飾る霊草として使用している例がある(盛口満「シダの扉」)そうで、理由はよく判らないが琉球文化圏では特別視されているように思われる。

1476夜『シダの扉』盛口満|松岡正剛の千夜千冊

 

Ligodium microphyllum.

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こちらは同属のイリオモテシャミセンヅル。西表島産の個体の胞子をもらってきて蒔いたもので、管理人宅で植栽している。こちらもナガバカニクサと区別することなく「シチ・カッツァ」と呼び、同様に魔除けとして利用する。

Sporophyll

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イリオモテシャミセンヅルの胞子嚢(葉の裏側)。温度さえ保てれば胞子からの育成も(シダとしては)難しくはない。観葉植物として面白さはあるが、大株になるとツルがやたらと伸びて周囲にからまるので少々扱いづらい。鑑賞的に仕立てるのが難しく、持っていて自慢できる珍種というわけでもないので栽培している人をあまり見かけない。管理人が育てているのも園芸というよりは文化史的サンプルという感じ。

Stenoglottis hybrid.

Stenoglottis (longifolia X fimbriata)X self.

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通称ムレチドリ。もともと「ムレチドリ」は南アフリカ固有種Stenoglottis longifoliaの和名だったようだが、最近では同属のSt.fimbriata(ウズラバムレチドリ)との交配種、およびその後代がムレチドリの商品名で大量に流通するようになっている。ガーデンセンターなどで山野草として普通に売っているので、どこかの業者が量産していると思われるが詳細は把握していない。(情報をご存じの方はご教授いただけると嬉しいです)

画像個体は管理人が試験的にムレチドリを自家受粉で交配し播種育苗したもの。稔性は低かったが、このように種間交配種の自家交配で苗が得られるケースはどちらかと言えば珍しい。

原種のロンギフォリア種は美麗かつ強健で育て易いが、エビネ並みの大型種で栽培に場所をとる。一方でフィンブリアタ種は小型で山野草的だが暑さにはそれほど強くなく、沖縄などでは栽培が難しい。両者の交配種はそこそこ小型で強健、良いとこ取りの良交配で入門者におすすめできるランの一つ。

沖縄だとほぼ常緑だが、本土の場合10℃以下になると落葉休眠するようだ。ただし耐寒性はそれほど高くはなく、落葉するような環境では生育は良くないと聞く。本土でも太平洋側の温暖な地域だと無加温で野外栽培しているという報告を散見するが、低温になるほど水分管理の失敗でまるごと腐る確率が高くなる。スパルタ栽培だと、あまり長生きはしないと思う。

本属は地下にネジバナのような多肉で水分の多い紡錘根がある。この根を、茎をごく一部つけて本体からはずし、植えつけておくと新芽を出してくる。キク科の園芸植物ダリアを塊根分割で殖やすような感じである。通常の分株に加えて、この「根伏せ」でも繁殖できるので増殖は容易。

しかし一方で多肉根は古くなると非常に腐りやすくなる。大株になると中央の根塊がごっそり溶けて病原菌の温床となり、元気に育っていた株がいきなりスッポ抜けて駄目になることも珍しくない。植え替え直後の小苗だと古根が無いのでそれほど気にする必要はなく、放任に近い状態でもトラブルなく育ってしまう。その時点で簡単だと思って油断し、そのまま植え替えをせずに育ててしまうと突如として調子を崩す。症状が現れた時点では地下部が手のほどこしようが無い悲惨な状態になっている、というのがよくあるパターン。毎年きちんと植え替えて腐りかけた古根を取り除き、株分けして一株のサイズを小さくしておくのが長期栽培のポイントになる。

短期的には栽培容易と言えるランなのだが、愚直に世話を続けて長い年月育て続けている人を探すとほとんど見かけない。商業生産品なので消費栽培上等ではあるのだが、そういう状況になんともいえず哀しい気持ちになるのは管理人だけだろうか?

Macodes petola

in Orchid Show.

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マコデス・ペトラ、和名ナンバンカゴメラン。(環境省資料ではナンバンカモメラン)

某蘭展にて撮影。

 

いわゆるジュエルオーキッドの一つ。画像では判りにくいが、実物は葉脈がキラキラと光を反射し金属感のあるパウダーゴールドに輝いている。おそらく観葉植物の中でも最も美麗な種の一つだろう。沖縄でも西表島に同種とされるものが分布しているが、自生地画像を見てみると色調ははるかに地味で、本当に同種なのか疑問に感じる。と言っても個体変異が著しいグループなので外見からの分類は限界があると思われ、詳しいことは学者先生のDNA解析におまかせしたい。

この種は平成28年に「特定」国内希少動植物種に指定されたため、現在では販売申請をして販売許可証を取得した登録業者しか販売・譲渡ができなくなっている。指定以前にはアクアリウム関係の採集業者が東南アジア各地で野外採集した個体を国内に持ち込んでいたことがあり、産地による形態の違いがマニアの話題になったりもした。

ebikusaariki.blog106.fc2.com

展示されていた個体は東南アジアで人工増殖されて日本に輸入されている系統らしいが、一般的な個体とは比喩ではなく)輝きが違う。おそらくトップクラスの美麗個体を増殖しているのだろう。

これと同一に思える外見の個体が、販売許可をうけているとは思えない町の花屋や、ホームセンターなどで売られていることがある。法的な規制があっても実態としてはザル法になっているようだ。まあ山採り個体でなければ売買しても自然保護上は特に問題無いはずなので、見かけても苦笑しつつスルーしている。

というか、本来ならばマニア秘蔵の高級園芸植物として扱われるべき希少種のはずなのだが、飾り捨て用の特売品になっているのを見ると複雑な気分になる。

いずれにしてもジュエル系の植物は、四季の環境変化が激しい日本では夏に暑すぎたり冬に寒すぎたり、湿度が高すぎたり低すぎたり、ほとんどの地域で何かしらの環境不適合がおきるため自然気候下では栽培が非常に難しい。それに加えて本来が長命な植物ではないようで、「きちんと世話をしている」程度の甘ったれたヌルい扱いをしていれば5年から10年程度で枯らしてしまうのが普通ではなかろうか。山野草系の栽培スキルに加えてアクアテラリウム系の設営管理、洋蘭系の増殖知識などを複合的に駆使しない限り、永続的に生存させるのは無理だろう。多種多様なジュエル系が、定期的にかなりの数が輸入されてくるにもかかわらず、国内で作りこんで増殖させた個体はほとんど流通していない。導入された株がどうなっているかは推して知るべしという感じではある。

Phalaenopsis Anna-Larati soekardi

cultivate by A.Orchid nursery@Okinawa.

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コチョウランの小型原種交配。(Phal.pulcherrima ×parisii)

沖縄のA洋蘭園の栽培品。花型はparishiiに近い印象。

 

この交配種を親にした後代も作出されているが、山野草的でなかなか面白い。

http://farm4.staticflickr.com/3692/12415286704_87e1734d44_c.jpg

(Phal.Anna-Larati soekardi X (lobbii X thailandica))

 

日本のコチョウラン生産はご贈答用の鉢植えが主体で、単価を抑えるために播種や育苗の段階が東南アジアに丸投げされていることも多い。マニアックな交配種は生産数が少なく、一般的な花屋だとどこでも同じような交配種しか扱っていないため面白味に欠ける。耐寒性のある落葉性コチョウラン、一般的には交配に使わない小型種や、日本特産のコチョウランである(セディレア属からファレノプシス属に変更された)ナゴランなどを親に使って、シンビジウムの「和蘭シリーズ」のように従来の洋蘭とは異なる方向性の育種をしてみるのも面白いと思うのだが。

ちなみに宮崎の某業者さんは日本産のナゴランや富貴蘭セッコクなどを片親に使って、秀逸な洋蘭交配種を多数作出している。

Habenaria hybrid 'Unreported'(seeds)

continue from 01/08/2017

25 days after pollination

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8月1日の記事の続き。

(ミズトンボ×オオミズトンボ)×セルフ、交配後25日目

 

seed pods

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果実の拡大画像。

 

almost mature embryo of 25 days seeds

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稔性チェックのため果実から取り出した種子、拡大画像。胚はほぼ成熟しており、稔性も良い。

 

・・・え?

・・・えええええええ????

稔性がある???

 

ハベナリア類の異種間交配種は、一般的に稔性がきわめて低い。

たとえばスズキサギソウ(ミズトンボ×サギソウ)は交配すれば果実は膨らむが、内部にできる種子はほとんど全部が無胚種子で、蒔いても発芽はしない。スズキサギソウを母体にして正常なサギソウの花粉を受粉させれば、非常に低い確率で発芽力のある種子が発生することもあるが、基本的にはほぼ完全不稔に近い。(スズキサギソウを花粉親にした場合は花粉の活性が低いためか、ほとんど受精しない)

ハベナリア・ロードケイラ種群内での交配のような、ごく近縁の交雑であれば稔性が保たれるが、それ以外のハベナリア種間交配種はほぼ不稔になる。自家受粉でも有胚種子ができるような高稔性の交雑種は管理人には心当たりが無い。

・・まあ普通の人の感覚では、種子ができたからって何が嬉しいの?と思うだろうが、この交配種の場合はちょっと背景が特殊だ。

ハベナリアは個体寿命が短いので実生更新できないと栽培維持は困難。だが日本国内のオオミズトンボは近親交配が進んでおり、限られた種親から増やされた増殖流通個体だけでは今後の世代更新を続けるのが絶望的な状況にある。しかし園芸的な視点だけを考えるなら、外見上オオミズトンボに見えるランであれば、実際には雑種であっても観賞的な面では問題ないのではないか? 虚弱で実生苗ができない純血ニオイエビネより、強健で実生の容易なニオイエビネ型コウズのほうが園芸的には優良ということはないか?(交雑は遺伝子汚染である、という意見は当然あると思っているし、安易に雑種を作ることに問題がないとは言わない。一目見て種間交配種と判るランを、珍しい山採り原種と偽って素人に高額で売りつけた事例が多数ある山野草業界が、洋蘭のような血統の記録管理などするとは思えない)

まあ、現状では何を語っても妄想にすぎない。とりあえずこの種子の育成について、本土の育苗業者と相談してみようと思う。

Tylophora matsumurae

flower

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ヒメイヨカズラ。ガガイモ科の多年草

知人から実生苗を譲ってもらったもので、正確な産地は不明。野生での分布域は鹿児島県(島嶼)以南、琉球列島。伊豆諸島・九州・沖縄に分布するツルモウリンカの海岸型矮性タイプと言われているが、確定されてはいないようだ。

野生では草丈10㎝程度の場合が多く、自生地画像を見ると山草的でかわいらしい。ごく一部ではあるが興味を持つ人もいるので業者が苗を販売することがある。(栽培してみると間延びしやすく、鑑賞的に育てあげるのは意外と難しかったりするのだが、まあそれは置いておくとして)自然愛好家からは「絶滅危惧種が売り買いされているのはけしからん!」と非難されたりもする。こういうものをブログのネタにすると、一歩間違うと炎上する原因になるため危険である。管理人は判っていてやっているので何かあっても自己責任だが、良い子は真似しないように。

本種は海岸の石灰岩の隙間に長く根を伸ばしていることが多いため、盗掘しようと思ってもそれほど簡単ではない。園芸需要が多い植物でもないので買い取る業者も少ないだろうし、流通価格も安いので販売目的で盗掘される事はあまり多くないと思っている。まあ思っているだけで根拠は無いのだが。

 

seed pods

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こちらは果実。二個ずつの果実が角状に伸びて珍妙である。花よりも果実のほうが観賞価値があると言う人もいる。

ガガイモ科は自家不和合のものもあると聞くが、ヒメイヨカズラは例外的に自家結実、それも自動受粉で全部の花が勝手に結実する。人工交配する必要が無いうえに近交弱勢もない。種子は大きくて播きやすく、苗を育てるのも容易。

要するにこの植物の場合、岩場の野生株を苦労して掘ってきて馴化するより、種子がはじける頃に果実を1個採ってきて、圃場で蒔いて殖やしていくほうがはるかに簡単で楽なのだ。

一方で野生蘭の場合には、多くの種類はウイルス耐性が低くて長期栽培が難しく、実生育成するのも特殊な設備や技術が必要になる。仮に実生技術があっても近交弱勢が激しく、一系統だけ手に入れても継続した実生は不可能だったりする。平均的レベルの園芸家が育てればほぼ確実に消費的栽培になる。増殖コストがかさむのに高額では売れない、という植物は業者が殖やそうとしないため、販売流通する原種蘭は野生採取ばかりになっているのが実情だ。そういうものであれば販売が非難されるのも理解できるし、場合によっては何らかの形で販売流通を規制する必要もあるだろう。実際にそういう方向で法整備が進行中でもある。

栽培も増殖も容易で採集圧も低い植物を、絶滅危惧種だから売り買いするな!栽培するな!と抑圧してもあまり意味はないだろう。が、逆に栽培・増殖が難しくて採集圧が高い植物を深い考えもなく入手し、不特定多数の人が見られるブログに載せるのもクールな趣味家のやる事とは言い難い。ではどの植物であれば栽培・紹介する対象として妥当といえるのか、線引きの判断はなかなか難しい。まあ、今の時代の流れとしては、普通の趣味家は「園芸植物」のみを栽培対象にしておくほうが余計なトラブルを避けられるだろうとは思っている。

 

seeds

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10月2日追記。完熟裂開した果実&種子。

ガガイモ科の種子には冠毛があって風で飛ぶ。いわゆるケサランパサランの正体の一つ。モフモフしていてちょっと可愛い。

Habenaria hybrid 'Unreported'

Habenaria sagittifera X Hab. linearifolia

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ミズトンボ♀ × オオミズトンボ♂

人工交配個体。某植物園バックヤードにて撮影。仮称はチュウミズトンボ(笑)

花弁がミズトンボより白く、距の形状が両親の中間型。交雑していることはほぼ間違いない。しかし唇弁はミズトンボによく似ており、全体としての印象はミズトンボに酷似している。珍品ではあると思うが、園芸的にはわざわざ作る意味がないように思う。

オオミズトンボはミズトンボと混生していることがあるので、自生地でも自然交雑していておかしくないのだが、印刷物になった発見報告をまだ見たことがない。

が、aoikesi氏のブログにおいて、オオミズトンボ自生地で撮影された、この交雑種と思われる野生個体の画像が公開されている。

zaonofumoto.blog107.fc2.com

 

in Habitat. Fukushima pref. Japan. 08/2016

Photo by Mr.aoikesi

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上の画像はaoikesi氏のブログより引用させていただいた。形態は人工交配チュウミズトンボとほぼ同じに見える。おそらくこれが日本で唯一の公開された画像だろう。学会発表しても良いくらい貴重な記録であり、ハベナリア好きの管理人は参考資料として画像保存させていただくことにした。

今までも自然界で交雑個体が出現していると思うのだが、ミズトンボやオオミズトンボだと誤認され、存在を認識されていなかったのではなかろうか。現在ではオオミズトンボの自生地数・自生個体数が激減しているので、このような交雑個体が新規に出現する可能性は非常に低くなっていると思う。

人工交配個体の栽培者の話では、交雑種に稔性があるかどうかは未確認とのこと。しかしミズ・オオミズ混生地でも浸透交雑による雑種個体群が生じていないことから推察して、おそらく一代かぎりの不稔雑種だろうと予想している。(*9月8日の記事に追加報告あり)