Scutellaria rubropunctata

from Amami island, Japan.

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アカボシタツナミソウ、紅一点花風。奄美大島産。

アカボシタツナミソウは屋久島から沖縄本島にかけて分布する、琉球列島固有種。耐寒性があり、本土でも強く凍結させなければ屋外でも越冬する。花がそこそこ綺麗で栽培も容易だが、栄養状態が良いと50cmぐらいにまで育って間延びするため、園芸的にはほとんど利用されていない。花の斑紋には個体差があり、ほとんど紫点が無くて白花に近いものからベタ紫に近いものまでバリエーションに富む。しかし特定の産地だけ見ると自家結実種子で殖え広がった同一系の個体群であることが多いらしく、個体数があっても全部同じような花だったりする。

画像は奄美大島産の系統と聞いているが、ネットで画像検索してもあまり見かけない配色である。まあ、良く見ないと気がつかない程度の変異なので興味を持つ方も少ないとは思うが、こういう微細な違いをチェックするのがマニアというものなのである。

 

in Habitat, Okinawa island, Japan.

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こちらは沖縄本島・東村で撮影した自生の標準的な個体。探せばいろいろなバリエーションがあるのだろうが、あまり本気で探したことがない。鑑賞的にはこちらのほうが上という気がしないでもない。

Amitostigma lepidum

seedling in 2019.

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オキナワチドリ実生初花。純白地・二条点。

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花粉塊は黄色。

特にインパクトのある花でもないし、だから何?で終わりである。イワチドリで非常に良く似た品種が量産されて広く出回っているので、多少ランに詳しい方であれば珍しくも何ともないと思われることだろう。はい終了。今回はこれで解散。

 

・・が、花粉塊が黄色、とか言われても普通の方には何が言いたいのか理解できないと思うので、一応説明しておく。いわゆるチドリ類には「純白地」と「酔白地」という品種がある。両者は外見的にはほとんど区別がつかないが、遺伝的にはまったくの別物である。そのため両者を交配すると遺伝性を打ち消し合って、子供はすべて普通花(ピンク地)になる。だから交配育種をする場合には、両者を混同しないよう注意する必要がある。

区別をつけるポイントは、純白地の花粉は純黄色、酔白地の花粉は黒灰色をしているという点である。これはチドリ類の交配育種をする上での基本知識で、ブリーダーにとってはきわめて重要な観察ポイントとなる。(逆に言うとブリーダー以外には何の意味も無い無駄知識である)

でまあ、言いたいのはそういう事ではない。オキナワチドリでは酔白地品種はそこそこ発見されているが、純白地品種は管理人の知る限りでは、いままでに1個体だけしか見つかっていない。一般流通していないので、野生ランマニアでも実物を見る機会はほとんど無いはずである。

また、イワチドリっぽい花型というのは野生オキナワチドリには存在しない。固定した二条点の品種というものも存在しない。そして、今はオキナワチドリを育種しているブリーダーも存在しなくなっている。

そういう知識をふまえた上で画像をもう一度見ていただきたいのだが、何かおかしいと思わないか?と聞きたいわけである。(念の為申し上げておくが、合成画像ではなく実在する個体である)

しかしながら、こういう解説というのは書いていて非常にむなしい。専門用語を使った駄洒落を用語から説明して理解してもらうようなもので、判らない人にむりやり理解させても面白くは感じてもらえないだろう。そういう普遍性の無いネタはスベるからやめとけ、という話なのである。

一応、画像記録として残しておくが、だから何?と言われるのは判っているので、実生活で他人に見せる事は一生無いと思う。

 

wild form seedling, origin from Okinawa island, Japan.

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ちなみにこちらが野生型(沖縄個体群標準タイプ)。普通の「ラン好き」程度の方だと、管理人の経験的にはどんな個体を見せても反応は一緒である。どんな花でも等しく美しい、という感性ならそれはそれで素晴らしいのだが、興味が無い種類はどれでも同じに見えてしまう、という事らしいので激しく萎える。

結局のところ、ニッチな話題を興味の無い方に語るのがそもそも間違いなのだろう。昭和の頃であれば情報に飢えている「濃い人」にしかこういう話題は届かなかったのだが、最近はほとんど興味を持っていない薄っすい人に幅広く情報が届いてしまう。情報発信すると、情報など求めてもいないらしき方から予想外の反応が返ってきて、あー普通の方はそういう見方をするのね、と心を折られる。

というかイワチドリやウチョウランのほうが衆人受けは良いのだから、反応されることだけが目的の方はオキナワチドリなど栽培するだけ無駄である。業者の量産チドリを購入して、お花が咲きましたーとSNSに乗せて、「いいね」を稼いだあとはそのまま枯らしていれば良い。野生採集個体でなければ消費栽培で何の問題もない。興味を持っていると口では言っておられる方々も、ごく一部の方を除いて真面目に育てようとまでは思っていないという現実を、この20年で嫌になるほど見せつけられた。もう十分だ。今後は栽培に関する発信も極力減らしていこうと思っている。

New Book

published in 15/01/2019

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ゲッチョ先生こと、盛口満氏の新刊。琉球弧(奄美含む)の植物利用についての聞き書き集。初耳の情報が多く、植物に関する雑学集として秀逸だが、文章が主体で図録ではないため読み手を選ぶ。

内容的には知識収集属性のある人間ならばゾクゾクするかもしれないが、そうでない人間は開いただけで睡魔に襲われるだろう。まあ、「ゲッチョ先生の本」と言って理解できる方なら読んでも損は無いとは思うが、正直言って一般向けとは言い難い。

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内容的には上画像のような感じ。森林がなく開墾地が広がる喜界島では魚毒漁に樹木が使われることは少なく、畑雑草であるティンボッサー(キツネノヒマゴ)が使われていた、という話の挿絵部分である。喜界島ってどこ?なんで森林が無いの?魚毒漁って何?キツネノヒマゴなんて聞いたこともないんだけど?という人には面白くも何ともないと思われる。

あーそうなんだ、と興味を持って読むためには地政学、文化史、植物知識などについての背景がよく理解できていて、その上ですっごく非常識な部分がある事に気づいて面白がるという行程が必要になる。本書では一般向けゲッチョ本のような背景解説は書かれていない。普通の人だと面白がる以前の段階で、書いてある内容の特殊性がそもそも理解できないと思う。

南方熊楠(1941年没)と聞いた時に、それが誰で何をした人か理解するだけでなく、彼が40年飼ってたペットの「お花」ちゃんはその後も2001年まで生きてて話題になったよね、などという話まで普通に出てくるような変な人であれば、この本をお奨めしておきたいと思う。

Habenaria unknown hybrid

probably,

Pectabenaria Rapee Sagarik (Pecteilis susannae X Habenaria myriotricya=medusa)

X Hab.??

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ラベル間違いで入荷した正体不明のハベナリア(おそらく交配種ラピー・サガリク)が自然結実していたので試しに播いてみた実生個体。ハベナリア交配種は(ごく一部の例外を除いて)極端に稔性が低く、セルフ交配だとほぼ不稔になるので近くにあったハベナリアのどれかと虫媒交雑したのだと思うが、正確なところはよく判らない。

不稔に近い交配種でも正常稔性の原種個体の花粉をつけてやると、非常に低率ではあるがF2個体が作出できることがある。日本でも3元交配種がいくつか作出されているが、稔性が低いうえに着生蘭と比較すると種子量がものすごく少ないので、後代実生の量産が難しい。そのため数多くの実生の中から優良個体を選びながら交配育種していく、という洋蘭で常識的に行われている手法が、不可能とまでは言わないがあまり現実的ではない。

そうなると(言い方は悪いが)「交配してみたらこんなもんができました」という、血統書付きの犬のミックスを思いつきで作ってみました的な、ブリーダー視点で見た場合「目標が何も無い、好奇心で混ぜ合わせてみただけの交配」にならざるをえない。

というか、ミックス犬なら同種交配なので、本気でやるなら後代選別して新品種育成も可能である。むしろネコ科一代雑種のレオポンとかライガーを作って見世物にしています、野生種保存って何それ美味しいの、みたいな感じだろうか。

この個体は鑑賞価値から言うとかなりの優れ物ではあるのだが、個体寿命の短いハベナリアの場合、仮に良いものができても「はい枯れました終了です、実生もできないので次はありません」という流れになる。不稔でも栄養繁殖だけで半永続的に育てられるジャンルの交雑種(山野草系に限っても、良いものがかなりある)なら話はまた別なのだが、管理人としてはハベナリアに関してはちょっとなあ…と思うわけである。

そもそも今の時期に咲いている時点でおかしいと思っていただきたい。休眠してないのである。冬期最低25℃育成である。沖縄でも温室必須、こんなもんは熱帯アジアで育てるべきものである。本土で育てる?本土ならサギソウが育てられる気候なんだから素直にサギソウ育ててやがれこんちくしょー、無駄だ、こんなもん作っても無駄だ無駄だ無駄無駄無駄無駄だだだだだだだ、はーはーぜーぜー(興奮による息切れ)

最近は東南アジアでもいろいろな交配種を作っているようで、交配親を伏せて新種ハベナリア(正確には新種でなく新品種と言うべきもの)として販売していたりする。その多くに交配親和性が高いメデューサが使用されているようで、サギソウっぽい切れ込みのあるハベナリアを見た時には、交配種の可能性を考えておいたほうが良いと思う。

Okinawan traditional Citron

left: Citrus unshiu / center: Citrus oto / right: Citrus depressa

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左はウンシュウミカン、つまり普通の蜜柑。中央は沖縄在来種のオートー。右は本土でも知名度が上がってきたヒラミレモン、沖縄名シークヮーサー

オートーは沖縄在来柑橘の中では一番ポピュラーな種類で、完熟すると寝ぼけた味になるので青切りの状態で流通する。甘味はそれほど強くなく、フレッシュなさわやかさ、若い香りを楽しむ青い果実である。(←危ない表現)収穫量が少ないことと、他の柑橘類に打ち勝つほどのインパクトがあるわけではないので、流通はほぼ沖縄本島周辺に限定されているようだ。地元で根強く愛されているローカルフルーツである。

シークヮーサーのほうは加工品が全国流通しているが、生果実の状態で出回るのは沖縄だけだろう。青果実は本土のスダチのように料理に使ったりできるので、食べ残した種子を埋めて発芽してきた苗を畑の隅に植え、家庭果樹として利用したりする事もある。粗放的栽培で品種管理などをあまり気にしていない場合も多く、生産者によって母樹の個体差がかなりある模様。十数種の選別品種があるらしいが、一括してシークヮーサーであり品種ごとに区別した流通はされていない。ちなみに画像のように黄色くなるまで熟したものは生食用で、「黄金(クガニー)」と呼ばれる。しかし甘味はあるがそれ以上に酸味が強いので、今の時代だとフルーツとして大量に食べる人は多くないと思う。

 

Citrus tarogayo

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こちらは沖縄在来果実で最も生産量が少ないタロガヨ。外見的には同じく在来品種のカーブチーとほとんど区別がつかないが、こちらのほうが果皮が薄い。

検索表はこちら。

甘味や酸味はオートーよりも淡白な感じだが、他の柑橘類のどれとも微妙に異なる独特の香気がある。それゆえごく一部ではあるが、タロガヨでなければ駄目だ!という固定ファンがいる模様。沖縄でも道の駅など、産地直売コーナーで少量販売されるだけなので、来沖された方が運良く見かけた時にはご賞味いただきたい。

こういう地元密着型の農産物は、栽培しているお年寄りが引退したとたんに消えてしまうこともある。少量でも良いから、今後も生き残っていってほしいと思う。

Paphiopedilum Leeanum?

in Okinawa island, Japan.

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鉢植えのパフィオペディルム。沖縄本島中部にて。

パフィオは詳しくないので間違っていたらご指摘いただきたいが、交配種リーアナム(Paph.insigne X Paph.spicerianum)ではないかと思う。パフィオ最強健種と言われる、沖縄家庭園芸の友である。

沖縄では画像個体のように、植え替えもされず放任栽培で大株になって咲いているのをしばしば見かける。気候的には地植えにしても十分いけるはずだが、さすがに花壇に植えている人はあまりいないようだ。まあ、本土における並シュンランぐらいの感覚ではなかろうか。

洋ランマニアには見向きもされない「駄物」だが、「丈夫」という特性は園芸的にきわめて優れ物ではある。しかし植え替えなどの世話は面倒臭いという非園芸人にとっては、いつまでも枯れずに生きている鉢物など、むしろ邪魔物でしかない。シンビジウムの鉢物を、花が終わったあとも大事に世話している人はどれぐらいいるだろうか?

花壇植えで過酷な夏を灌水無しで平気で越し、ノーメンテナンスで毎年咲く、というぐらい丈夫ならまた話は別だが、ラン基準での「丈夫」は一般基準では中途半端すぎて何の意味も無い。植え替えしないと枯れるなら、花が終わった時点でとっとと枯れて目の前から消えてくれたほうがいい。

世間は「粗雑に扱ってもすぐには死なない」という、一時的耐久力以上のものは求めていない。「大事にすればこちらの愛情に応えて頑張ってくれて、共に長く生きていける」という細く長い性質は必要ではない。ブラック企業が使い捨て社員を求めるように、少しでも安い値段でどんどん使い潰せるのが「良い花」だ。求められているのは気を遣わなくてもどんどん花が咲いて3ヶ月で枯れるガーデンシクラメンであり、ちょっと気配りが必要だけれど50年生きてくれるシクラメン・ヘデリフォリウムでは無い。

良い悪いの問題ではなく、古今東西そういう価値観のほうが多数派で、疑問を呈するのは社会不適合者のみである。大量消費のメインストリームに棹さす者は流され、智に働こうとすれば角が立ち、意地を通せば窮屈だ。今に始まったことでもなく、とかくこの世は住みにくいのである。

Arundina hybrid

Aru.chinensis form X graminifolia alba.

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ナリヤラン「雲南省矮性」×小型系統純白。

親個体については過去記事参照。

この個体はどちらかというと母親似。淡色×純白の実生のためか、セミアルバと言っても良い色調になった。

「ナリヤラン」は原産地が違うと著しい差異が認められることが珍しくない。系統ごとに草丈、花の大きさや色形・耐寒性・繁殖率・栽培難易度などが激しく異なり、学者によっては別種として学名をつけている場合もある。形態的にgraminifoliaの範疇であっても、別種とは言わないまでも亜種扱いで良いのでは、と思うような個体群が色々とあって、分類学的に細分と統合が繰り返されている。実物を見ないで文献だけ調べても、何が何だかよく判らない。

花命が短いため園芸的にはあまり重要視されていないランなので、地域変異をコレクションしたり交配育種したりしている人はほとんどいない。地域変異に関する資料は少なく、属の全容が混沌としている。

「ナリヤランの栽培は…」とか解説しているサイトは数多くあるが、その記述は多くの場合、特定の個体群(の中の一個体)を育てた経験談(あるいは実際には栽培しておらず、どこかから転載しているだけ)にすぎないことに注意していただきたい。本気で踏み込むならば、広義の「ナリヤラン」の栽培は単純に語れるようなものではない、とだけ申し上げておく。