Allium pseudojaponicum

from Amami island.

f:id:amitostigma:20171207110040j:plain

アマミラッキョウ(タマムラサキ)。奄美大島産。知人から栽培株を分けてもらって育てている。

本土のヤマラッキョウは葉が円筒状で中空だが、アマミラッキョウはニラのように葉が扁平で中実。その中間タイプのナンゴクヤマラッキョウというのもあるそうだ。これらが地域変異の範疇なのか、はたまた別種とすべきものなのか、あるいは倍数化or交雑起原なのか情報が乏しくて管理人にはよく判らない。f:id:amitostigma:20171207112254j:plain

アマミラッキョウとされる個体でも、産地によって4倍体やら雑種起原やらいろいろあるらしいがDNA鑑定でもしないと判別は難しい。画像個体は奄美大島産なのでアマミラッキョウで良いと思うのだが、同定に自信は無い。本土のヤマラッキョウの場合でも産地によって2倍体個体群、4倍体個体群、8倍体個体群があって、生育環境も湿原だったり乾燥した丘陵だったり岩場だったり同種と思えないくらい生態に違いがあるという。染色体数が違っていても外見的には酷似していて、ネット画像では識別が困難。詳しいことは学者先生におまかせしたい。

栽培については特筆すべき事も無い。ごく普通のラッキョウである。

Nervilia nipponica propagation in flask

bloom in flask > autopollination > mature seeds > autocultivation

f:id:amitostigma:20171121112129j:plain

昨年12月に紹介した沖縄本島産ムカゴサイシンの続報。菌依存性が高く、鉢栽培は困難なのでフラスコから出さずに継代培養しているが、今年は5本が開花してそのうち1本が結実した。

鉢栽培が可能な台湾ムカゴサイシンNervilia taiwaniana の場合は人工受粉しなければ結実しない。本種も今まではフラスコ内で結実したことは無かったので、結実には交配作業が必須だと思っていた。しかし振動か何かの影響で自動受粉することもあるらしい。だがラン科の場合、自家受粉だと果実ができても無胚種子しか入っていない事がよくある。果実が膨らんでいたのには気がついたが、「想像妊娠」だと思ってそのまま放置していた。

先日、ひさしぶりにフラスコを見てみたら親株の根元に白い粒々が見えた。コンタミ(雑菌侵入)かな?と思ってよく見たらプロトコーム(菌依存段階の幼若実生)だった。どうやら有胚種子ができていて、それがこぼれて勝手に発芽していたらしい。

ムカゴサイシンは果実が急激に生長して短期間で裂開するが、少し早めに採果すると種子が未熟すぎて発芽しない。かといって様子を見ていると変色などの前兆がないまま、いきなり果実が裂開して種子が消えて無くなっている。採取にベストなタイミングは数日程度、その時期を正確に見きわめて培養を開始する必要がある。ベストな期間に採果できても種子が消毒に弱く、1果実あたりの種子量も20粒に満たないことが多いので播種の技術的難度は高い。加えて好適培地はどういう組成なのか情報が皆無。過去に何度も培養に挑戦したがことごとく失敗、入手する機会がほとんどない貴重な種子を無駄にするだけで何の成果も得られなかった。神経を使う繊細な作業を繰り返しても無駄に終わり、吸い取られていく時間と労力にメンタルをゴリゴリと削られた。ようやく数個体の実生が得られた時には、やっと培養条件を解明できた!と力が抜けたものだ。

それが今回は放置状態で勝手に発芽していて、自分が苦労した時より数多くの実生ができている。非常に複雑な気分である。

親株は結実で体力を消耗したようで、新球根は一応できてはいるものの非常に貧弱。菌共生させていない普通の鉢栽培であれば、おそらく開花結実させると衰退消滅すると思う。まったくもって栽培向きではない。

まあ、殖やして需要のある植物でもないので園芸的には無意味な話だが、こういうこともあるという報告として書きとめておく。

Lygodium japonicum var. microstachyum

in habitat. Okinawa island, Japan.

f:id:amitostigma:20171107153552j:plain

ナガバカニクサ。沖縄本島にて。

本土に分布するカニクサの変種で、頂裂片がカニクサに比べてやや長い。葉の光沢が若干強いのでテリバカニクサの別名があるという。ツル性で他の植物にからみつきながら伸び、よく育つと2m以上になることもある。

 

Sporophyll

f:id:amitostigma:20171107154118j:plain

こちらは胞子葉。形状がかなり異なり、知らないと別種のシダに見える。

沖縄本島ではほとんど注目されていない植物だが、八重山諸島だとカニクサ類は祭礼の魔除けとして使われる。有名なところでは西表島の節祭(シチ:本土の節分に相当する年改めの日に行われる大祭。旧暦10月前後の己亥(つちのとい)の日からの3日間、2017年は11月8~10日)に必須とされ、いわば本土の節分におけるヒイラギのような存在。方言名もシチ・カッツァ(節祭蔓)である。具体的にはリンク先ページ中段を参照。

www.chie-project.jp

奄美諸島でも神女が身を飾る霊草として使用している例がある(盛口満「シダの扉」)そうで、理由はよく判らないが琉球文化圏では特別視されているように思われる。

1476夜『シダの扉』盛口満|松岡正剛の千夜千冊

 

Ligodium microphyllum.

f:id:amitostigma:20171107161048j:plain

こちらは同属のイリオモテシャミセンヅル。西表島産の個体の胞子をもらってきて蒔いたもので、管理人宅で植栽している。こちらもナガバカニクサと区別することなく「シチ・カッツァ」と呼び、同様に魔除けとして利用する。

Sporophyll

f:id:amitostigma:20171107161711j:plain

イリオモテシャミセンヅルの胞子嚢(葉の裏側)。温度さえ保てれば胞子からの育成も(シダとしては)難しくはない。観葉植物として面白さはあるが、大株になるとツルがやたらと伸びて周囲にからまるので少々扱いづらい。鑑賞的に仕立てるのが難しく、持っていて自慢できる珍種というわけでもないので栽培している人をあまり見かけない。管理人が育てているのも園芸というよりは文化史的サンプルという感じ。

Stenoglottis hybrid.

Stenoglottis (longifolia X fimbriata)X self.

f:id:amitostigma:20171024102130j:plain

通称ムレチドリ。もともと「ムレチドリ」は南アフリカ固有種Stenoglottis longifoliaの和名だったようだが、最近では同属のSt.fimbriata(ウズラバムレチドリ)との交配種、およびその後代がムレチドリの商品名で大量に流通するようになっている。ガーデンセンターなどで山野草として普通に売っているので、どこかの業者が量産していると思われるが詳細は把握していない。(情報をご存じの方はご教授いただけると嬉しいです)

画像個体は管理人が試験的にムレチドリを自家受粉で交配し播種育苗したもの。稔性は低かったが、このように種間交配種の自家交配で苗が得られるケースはどちらかと言えば珍しい。

原種のロンギフォリア種は美麗かつ強健で育て易いが、エビネ並みの大型種で栽培に場所をとる。一方でフィンブリアタ種は小型で山野草的だが暑さにはそれほど強くなく、沖縄などでは栽培が難しい。両者の交配種はそこそこ小型で強健、良いとこ取りの良交配で入門者におすすめできるランの一つ。

沖縄だとほぼ常緑だが、本土の場合10℃以下になると落葉休眠するようだ。ただし耐寒性はそれほど高くはなく、落葉するような環境では生育は良くないと聞く。本土でも太平洋側の温暖な地域だと無加温で野外栽培しているという報告を散見するが、低温になるほど水分管理の失敗でまるごと腐る確率が高くなる。スパルタ栽培だと、あまり長生きはしないと思う。

本属は地下にネジバナのような多肉で水分の多い紡錘根がある。この根を、茎をごく一部つけて本体からはずし、植えつけておくと新芽を出してくる。キク科の園芸植物ダリアを塊根分割で殖やすような感じである。通常の分株に加えて、この「根伏せ」でも繁殖できるので増殖は容易。

しかし一方で多肉根は古くなると非常に腐りやすくなる。大株になると中央の根塊がごっそり溶けて病原菌の温床となり、元気に育っていた株がいきなりスッポ抜けて駄目になることも珍しくない。植え替え直後の小苗だと古根が無いのでそれほど気にする必要はなく、放任に近い状態でもトラブルなく育ってしまう。その時点で簡単だと思って油断し、そのまま植え替えをせずに育ててしまうと突如として調子を崩す。症状が現れた時点では地下部が手のほどこしようが無い悲惨な状態になっている、というのがよくあるパターン。毎年きちんと植え替えて腐りかけた古根を取り除き、株分けして一株のサイズを小さくしておくのが長期栽培のポイントになる。

短期的には栽培容易と言えるランなのだが、愚直に世話を続けて長い年月育て続けている人を探すとほとんど見かけない。商業生産品なので消費栽培上等ではあるのだが、そういう状況になんともいえず哀しい気持ちになるのは管理人だけだろうか?

Macodes petola

in Orchid Show.

f:id:amitostigma:20171016111548j:plain

マコデス・ペトラ、和名ナンバンカゴメラン。(環境省資料ではナンバンカモメラン)

某蘭展にて撮影。

 

いわゆるジュエルオーキッドの一つ。画像では判りにくいが、実物は葉脈がキラキラと光を反射し金属感のあるパウダーゴールドに輝いている。おそらく観葉植物の中でも最も美麗な種の一つだろう。沖縄でも西表島に同種とされるものが分布しているが、自生地画像を見てみると色調ははるかに地味で、本当に同種なのか疑問に感じる。と言っても個体変異が著しいグループなので外見からの分類は限界があると思われ、詳しいことは学者先生のDNA解析におまかせしたい。

この種は平成28年に「特定」国内希少動植物種に指定されたため、現在では販売申請をして販売許可証を取得した登録業者しか販売・譲渡ができなくなっている。指定以前にはアクアリウム関係の採集業者が東南アジア各地で野外採集した個体を国内に持ち込んでいたことがあり、産地による形態の違いがマニアの話題になったりもした。

ebikusaariki.blog106.fc2.com

展示されていた個体は東南アジアで人工増殖されて日本に輸入されている系統らしいが、一般的な個体とは比喩ではなく)輝きが違う。おそらくトップクラスの美麗個体を増殖しているのだろう。

これと同一に思える外見の個体が、販売許可をうけているとは思えない町の花屋や、ホームセンターなどで売られていることがある。法的な規制があっても実態としてはザル法になっているようだ。まあ山採り個体でなければ売買しても自然保護上は特に問題無いはずなので、見かけても苦笑しつつスルーしている。

というか、本来ならばマニア秘蔵の高級園芸植物として扱われるべき希少種のはずなのだが、飾り捨て用の特売品になっているのを見ると複雑な気分になる。

いずれにしてもジュエル系の植物は、四季の環境変化が激しい日本では夏に暑すぎたり冬に寒すぎたり、湿度が高すぎたり低すぎたり、ほとんどの地域で何かしらの環境不適合がおきるため自然気候下では栽培が非常に難しい。それに加えて本来が長命な植物ではないようで、「きちんと世話をしている」程度の甘ったれたヌルい扱いをしていれば5年から10年程度で枯らしてしまうのが普通ではなかろうか。山野草系の栽培スキルに加えてアクアテラリウム系の設営管理、洋蘭系の増殖知識などを複合的に駆使しない限り、永続的に生存させるのは無理だろう。多種多様なジュエル系が、定期的にかなりの数が輸入されてくるにもかかわらず、国内で作りこんで増殖させた個体はほとんど流通していない。導入された株がどうなっているかは推して知るべしという感じではある。

Phalaenopsis Anna-Larati soekardi

cultivate by A.Orchid nursery@Okinawa.

f:id:amitostigma:20170926151221j:plain

コチョウランの小型原種交配。(Phal.pulcherrima ×parisii)

沖縄のA洋蘭園の栽培品。花型はparishiiに近い印象。

 

この交配種を親にした後代も作出されているが、山野草的でなかなか面白い。

http://farm4.staticflickr.com/3692/12415286704_87e1734d44_c.jpg

(Phal.Anna-Larati soekardi X (lobbii X thailandica))

 

日本のコチョウラン生産はご贈答用の鉢植えが主体で、単価を抑えるために播種や育苗の段階が東南アジアに丸投げされていることも多い。マニアックな交配種は生産数が少なく、一般的な花屋だとどこでも同じような交配種しか扱っていないため面白味に欠ける。耐寒性のある落葉性コチョウラン、一般的には交配に使わない小型種や、日本特産のコチョウランである(セディレア属からファレノプシス属に変更された)ナゴランなどを親に使って、シンビジウムの「和蘭シリーズ」のように従来の洋蘭とは異なる方向性の育種をしてみるのも面白いと思うのだが。

ちなみに宮崎の某業者さんは日本産のナゴランや富貴蘭セッコクなどを片親に使って、秀逸な洋蘭交配種を多数作出している。

Habenaria hybrid 'Unreported'(seeds)

continue from 01/08/2017

25 days after pollination

f:id:amitostigma:20170908163145j:plain

8月1日の記事の続き。

(ミズトンボ×オオミズトンボ)×セルフ、交配後25日目

 

seed pods

f:id:amitostigma:20170908163203j:plain

果実の拡大画像。

 

almost mature embryo of 25 days seeds

f:id:amitostigma:20170908163225j:plain

稔性チェックのため果実から取り出した種子、拡大画像。胚はほぼ成熟しており、稔性も良い。

 

・・・え?

・・・えええええええ????

稔性がある???

 

ハベナリア類の異種間交配種は、一般的に稔性がきわめて低い。

たとえばスズキサギソウ(ミズトンボ×サギソウ)は交配すれば果実は膨らむが、内部にできる種子はほとんど全部が無胚種子で、蒔いても発芽はしない。スズキサギソウを母体にして正常なサギソウの花粉を受粉させれば、非常に低い確率で発芽力のある種子が発生することもあるが、基本的にはほぼ完全不稔に近い。(スズキサギソウを花粉親にした場合は花粉の活性が低いためか、ほとんど受精しない)

ハベナリア・ロードケイラ種群内での交配のような、ごく近縁の交雑であれば稔性が保たれるが、それ以外のハベナリア種間交配種はほぼ不稔になる。自家受粉でも有胚種子ができるような高稔性の交雑種は管理人には心当たりが無い。

・・まあ普通の人の感覚では、種子ができたからって何が嬉しいの?と思うだろうが、この交配種の場合はちょっと背景が特殊だ。

ハベナリアは個体寿命が短いので実生更新できないと栽培維持は困難。だが日本国内のオオミズトンボは近親交配が進んでおり、限られた種親から増やされた増殖流通個体だけでは今後の世代更新を続けるのが絶望的な状況にある。しかし園芸的な視点だけを考えるなら、外見上オオミズトンボに見えるランであれば、実際には雑種であっても観賞的な面では問題ないのではないか? 虚弱で実生苗ができない純血ニオイエビネより、強健で実生の容易なニオイエビネ型コウズのほうが園芸的には優良ということはないか?(交雑は遺伝子汚染である、という意見は当然あると思っているし、安易に雑種を作ることに問題がないとは言わない。一目見て種間交配種と判るランを、珍しい山採り原種と偽って素人に高額で売りつけた事例が多数ある山野草業界が、洋蘭のような血統の記録管理などするとは思えない)

まあ、現状では何を語っても妄想にすぎない。とりあえずこの種子の育成について、本土の育苗業者と相談してみようと思う。