Chloraea chrysantha

from Chile.

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知人宅で栽培されている南米チリ産の地生蘭。クロラエア・クリスタータというインボイスネームで輸入されたそうだが、クロラエア・クリサンタではないかと思う。

www.chileflora.com

 

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全体像。上画像の背後の四角いタイルの一辺がちょうど30㎝、草丈は100㎝前後だろうか。日照不足で徒長しているようだが、それを差し引いても鑑賞的な草姿とは言い難い。生長期は冬で夏は落葉休眠するそうだが、花時にはもう葉が枯れはじめるとの事。栽培を失敗しているように見えてしまうので、展示向きの花ではないと思われる。

少雨地域の植物なので水気に弱いらしい。雨に当てると腐り、花茎も軟質かつ多汁質で傷みやすく、風にふかれると折れて倒れるという。高温耐性はあるようだが、冬が雨期で風も強い沖縄は栽培適地ではないだろう。

本土の太平洋側で軒下越冬させたという話もあり、低温に弱くはないらしい。しかし雨が吹き込むと腐り、霜に当てても霜が溶ける時の水分で腐ってしまうそうで、屋外では栽培しないほうが良さそう。しかし全日照で加温しすぎず風雪を防げるような環境は、蘭屋の栽培棚には通常は用意されていない。砂漠系植物マニアの低温温室なら育てられるだろうか?

 

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セルフ交配してみたら結実したそうだが、有胚率は30%ぐらいだったという。発芽率はさらに低いだろう。まあ無菌播種で苗を育てても、ごく一部の変な人を除いて需要はないと思う。ちなみに交配から完熟までの期間はかなり短く、30日たたないうちに果実が裂開したそうだ。ただしランの場合、稔性が低く種子量の少ない果実は早期に裂開する傾向があるので、本来はもう少し長いのかもしれない。

 

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こちらは以前、秋の植え替えの時に撮影させてもらった画像。全体的に特大のネジバナという感じ。枯れた花茎の横から複数の新芽が出ているが、これは翌年には開花せず、数年かけて根に養分を蓄積してから再開花するそうだ。ネジバナと同様に、開花すると体力を使い果たして枯れてしまうことも珍しくはないそうで、複数の株を導入したが殖えていくよりも枯れたり腐ったりするほうが多く、鉢数は年ごとに減っているという話だった。

世界的に見てもほとんど栽培されていない属だが、性質を聞くと誰も育てていない理由がよくわかる。こういうものは見るだけに留めておくのが賢いと思う。

Musa balbisiana?

in Okinawa island.

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熱帯アジアが原産とされる、食用バナナの元となった原種品種群の一つ。沖縄では繊維採取用に栽培され、イトバショウと呼ばれている。ただしイトバショウというのは繊維用バナナの総称で、別種のMusa liukiuensisも同じくイトバショウと呼ばれる。栽培者も正確な種名は知らないことが多いため画像の種類としばしば混同されており、「イトバショウ」で検索すると両者の学名が入れ違って記述されていることも珍しくない。

画像の種類は、下記のバナナ属データベースと照合した結果ではフィリピン・インド原産のbalbisiana種ではないかと思われる。

MUSA Database

が、マレーシア原産のacuminata種と酷似しており、ネットではむしろイトバショウはMusa acuminataであると紹介されている例のほうが多いように思う。管理人は専門外なので種名については断定を避けておく。

花茎の基部に近い部分が雌花、つまりバナナになる部分で、先端に近いほうに雄花(画像参照)が咲く。原種balbisianaの実も食べられないことはないが、しっかり追熟させないとエグ味があり、本土のアケビの実のように果肉が薄くて大量に種子が入っているため通常は食用にしない。

原種バナナは自家不和合なので2系統以上が植栽され、なおかつ受粉昆虫(あるいは受粉コウモリ、受粉鳥)がいないと結実しないようだが、果実用種では単為結実品種(受粉しなくても実がなる)が発見され株分けで各国に広まったようだ。ちなみに現在日本で流通している生食用バナナは、ほとんどがacuminataの3倍体(=種無し)大果・単為結実品種らしい。

 

Musa spp. in Okinawa island

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こちらは通称「島バナナ」と呼ばれる食用種。

バナナ的エッセイ:沖縄・島バナナ編

明治時代に、ハワイ(推定)から小笠原諸島を経由して導入されたものだという。acuminataの2倍体・単為結実品種であるという説明を見たことがあるが、裏付けがとれる文献をまだ確認できていない。

3倍体品種の「普通のバナナ」は耐寒性がやや劣るため沖縄本島では美味しい実が採れないらしく、矮性品種の「三尺バナナ」を除いて栽培はほとんど見かけない。一方で島バナナは家庭果樹としてしばしば庭や畑に植えられている。熟した実はいわゆるモンキーバナナと外見的にほぼ区別がつかないが、上品な酸味と濃厚な甘みがあり格段に美味。残念ながら病害虫に弱く、生育が遅いうえ台風で倒伏しやすいため商業的に量産するのは難しく、需要に追い付いていないようだ。最近はネット通販でも人気商品らしいが、買うのを躊躇する値段である。

ちなみに近年、ミカンが栽培できる地域なら屋外越冬できる半耐寒食用バナナの苗が国内流通するようになり、沖縄でも徐々に栽培が広がってきている模様。ネット情報だと「実は小さいが酸味があって甘みも強く、食感がモチモチで独特」だそうだ。通販ではもう見かけるようになりはじめたが、まだ購入したことは無い。

Amitostigma lepidum

seedling.

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オキナワチドリ純白紫点花。花粉塊は黄色。

こういう花と前回の淡点花を交配すれば、後代で純白淡点花を作出できる可能性もある。

Amitostigma lepidum 'pale blotch'

(Amitostigma lepidum 'Blotch form' X 'Eikou') X self.

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(オキナワチドリ大点花×淡点花「栄光」)×セルフ。

画像個体の親株(F1個体)は多少斑紋が大きめな以外、ほぼ標準花。その花をセルフ交配して、孫世代で形質が再分離するか確認してみた。今年は数株しか開花していないので、遺伝性についてはまだ明確ではない。が、どうもF2で普通の紅点花と淡点花に分離するっぽい。

まだ断定はできないが、淡点形質が多因子遺伝でなく、単独遺伝子による劣性遺伝だとすれば育種には使いやすい。イワチドリのピンク一点花のようなものが、時間をかければ作れる可能性がある。

しかし残念ながら、管理人には新しい形質を洗練させていく時間はもう残っていない。誰かにバトンタッチしたいのだが、興味を持ってくれる育種屋は残念ながらいないようである。

Macropodus opercularis

Paradise gourami fish with Ryukyu Glass.

in Okinawa island.

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今回は植物の話はちょっとお休みして番外編。琉球ガラスの金魚鉢で飼育中のタイワンキンギョ沖縄本島の民芸品店にて。

飼育システムとして見た場合にはツッコミ所しか見当たらないのだが、琉球ガラスに沖縄織物のコースター、泳いでいるのは(後述するが)琉球文化と関係深いタイワンキンギョ・・と民芸店のインテリア設定としては非の打ちどころが無い。こういうのは否定すべきなのか賞賛すべきなのか、非常に悩ましい。

タイワンキンギョ(英名パラダイス・グラミー、パラダイスフィッシュ)は台湾のほか、中国南部や東南アジアに広く分布する野生淡水魚。画像はまだ幼魚なので地味だが、オスの成魚は成長するとメタリックで派手な色調に変化する。

paradise gourami - Google 検索

日本ではアジア各国で養殖された基本種、および黒色素欠損変種(アルビノ)がガーデンセンターなどにもしばしば流通している。海外では「スーパーレッド」とか「フルメタルブルー」とか、気合の入った選別育種をしているマニアもいるようだが、日本ではアルビノ以外の選別品種はほとんど見かけない。

沖縄では少なくとも琉球王朝時代から野生棲息していた記録がある。しかしメダカ、フナ、タウナギなど沖縄産の他の淡水魚はDNA解析で沖縄固有の個体群であることが確認されているのに対し、タイワンキンギョは調べられた範囲では海外の個体群と差異が見つかっていないようだ。そのため在来魚ではなく、古い時代に移入されたものではないか?とも言われている。

しかし各種の熱帯魚が野外放棄されてガンガン定着繁殖している沖縄の現状からして、仮に在来個体群がいたとしても放流された輸入系統と競合・交雑して消滅してしまっていてもおかしくないと思う。他の陸地と地続きになったことのない海洋島の南大東島でも棲息が見つかっているそうだが、純淡水魚が陸地から360kmも離れた絶海の孤島に自然分布しているわけがない。常識的に考えて野外投棄された野良タイワンキンギョだろうし、沖縄本島の「野生個体」も同じような状況ではなかろうか。

成熟したオス個体は縄張り意識が強烈で、自分と同じぐらいの大きさ、もしくはそれ以下の大きさの魚には攻撃をしかける。同種のオス同士だと互いに攻撃しあって、時にはどちらかが命を落とすことさえあるという。この性質から沖縄では「闘魚(トーイユ)」と呼ばれており、昔の子供は野生のトーイユをゲットしてきて、トーイユオーラセー(闘魚バトル)をして遊んでいたそうだ。聞くところではトーイユをモチーフにした玩具まであったそうだが、それに関しては残念ながら管理人は存在を確認できておらず、どんなものなのか画像すら見たことがない。

かつてはそれほど身近に親しまれていた生き物でも、今では名前を知らない人のほうが多くなっている。なんとも寂しいことではある。

in International Orchid Festival / Japan Grand Prix, Tokyo.

monthly 'Horticulture of Japan' 04/2017

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月刊「園芸JAPAN」(エスプレス・メディア出版)2017年4月号を購入。2月に開催された東京ドーム蘭展の速報記事に、オキナワチドリが日本の蘭部門で入賞したと書いてあった。

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連載「寝ても覚めても羽蝶蘭」では、番外編として入賞者本人が書いたオキナワチドリ栽培の解説文を掲載。沖縄では参考にしづらい部分もあるが、本土の方には役に立ちそう。(全文掲載はマナー違反なので、意図的にボカシをかけた

入賞花のオキナワチドリ「渚(なぎさ)」という品種については一度も名前を聞いたことがない。知人が会場で撮影していたというので、画像を送ってもらった。(転載許可済)

Amitostigma lepidum 'Nagisa' J.G.P. First Place.

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多少は大点っぽいが、きわだった特徴は無い。どういう品種なのか調査を進めたところ、大点花の自生地で20年ほど前に採集され、選別個体と対比するための同産地・標準花サンプルとして、無銘のまま延々と栽培され続けていた個体だそうだ。今年、出展にあたって初めて個体名をつけたという。そりゃ名前を聞いたことが無いわけだ(笑)

というか出品者は選別個体も多数所有しているのに、わざわざ標準サンプルを選んで出展し、しかもしっかり作りこんで入賞させてしまうとは変態 素晴らしい栽培技術だと思う。こういう栽培者がもっと数多くいれば、オキナワチドリも安泰なのだが・・。

Zizyphus mauritiana

Indian Jujube fruits, cultivate in Okinawa island, Japan.

delicious.

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インドナツメ。インド原産の果樹で、最近になって沖縄で栽培されはじめた。生産量はまだ少ないようで、観光客の来る土産物店の高級フルーツ売り場などでしか見かけない。けっこう良い値段で売られている。

blog.goo.ne.jp

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沖縄で生産されている品種は小ぶりのプラムぐらいの大きさ。中心に種が1個あるがプラムのように薄くはなく、ピーナツを大きくしたような円筒形。

皮は薄く、洗って皮ごとサクサク食べられる。リンゴをジューシーでなめらかな舌触りにした、あるいは少し固めの洋ナシからザラザラした食感をすべて除いたような感じ。リンゴと同様に生産者によって味の当たり外れがあるようだが、おちついた甘みと、ほどよい酸味があって食べやすい。

亜熱帯果樹だが、霜に当てなければ越冬できるようだ。本土でも柑橘類の営利栽培ができる地域なら(品質はともかく)栽培可能ではあろう。沖縄であれば気候的には露地栽培でまったく問題ないはずだが、実際には鳥害が激しいのでハウス栽培しないと駄目らしい。

台湾ではインドナツメは重要な農業生産品になっているようで、品種改良も盛んに行われている模様。台湾の果実直販サイトを見ると、「薄皮優選!爆汁!清香甜蜜!幸福的滋味!」と売り手の熱気がムンムンである。味は判らないが、青リンゴと見間違えるぐらいの巨大果もあるようだ。

青棗新品種:高雄11號「珍蜜」http://www.jujuba.tw/wp-content/uploads/2015/03/IMAG7355.jpg

台湾には大害虫のミカンコミバエがいるため、果実類の日本への輸入は一部を除いて禁止されているが、今年から低温殺虫処理をする条件でインドナツメの輸入が解禁になった。

台湾産インドナツメ、日本へ輸出可能に 7年越しで実現 | 社会 | 中央社フォーカス台湾

今後は本土のスーパーなどでも見かける機会があるかもしれない。

・・ただ、沖縄産も台湾産も、販売には苦戦しそうな気がする。日本人は青い果物というものになじみが薄く、赤くないと売れゆきが悪い。真っ赤なドラゴンフルーツは味的には辛味の無いダイコンと大差ないが、外見だけでスーパーで売られるまでに定着した。一方で味覚的にはフルーツの中でも上位に属すると思われるフェイジョアホワイトサポテ(どちらも緑)は「何それ?」と言われるぐらい普及していない。まあ、緑色のイチゴが売っていたら買うか?と考えていただければ想像がつくだろうか。

インドナツメは味覚的には優良果実だと思うし、沖縄の新しい産物になってくれれば良いのだが。