Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Dicranopteris linearis

in habitat. Okinawa island, Japan.

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コシダ。北限は福島県となっているが、どちらかというと南方系のシダ。亜熱帯地域に広く分布する。

沖縄本島では北部の山地で大きな群落が普通に見られる。葉が密生して地面を覆い尽くし、枯れた葉や茎は分解されにくく地面に堆積して植生遷移を阻害する。そのため崩落地や伐採跡に生えてくるパイオニア植物的なシダでありながら、長期間にわたってシダ単独群落のまま継続する。生物多様性という視点からは厄介者扱いされる場合もあるようだ。

大型で、地下茎が長く伸びて広がるため鉢植えには不向き。というか移植に弱く、根を傷つけるとすぐに脱水状態になって枯れてしまうため、採取して栽培するのはきわめて難しい。まあ、シダマニアの中にはごく若い小株を丁寧にまるごと掘ってきて、湿度を保持しながら時間をかけて養生して鉢植えに仕立てている人もいないわけではない。しかし大型で株分けできないし珍種でもないので、育てていても羨ましがられる植物では無い。シダ仲間から尊敬の念を込めて「馬鹿の極み(褒め言葉)」と称えられるのみである。

 

Basket made from fern stem. Okinawan traditional craft.

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コシダの葉柄は環境によっては1m以上に伸び、適期に採取すれば工芸材料として籠などを編むことができる。沖縄本島では「わらび籠」と呼ばれ、今帰仁村の特産品になっていた。20年ほど前までは現地の雑貨屋などでまだ売られていたが、現在では幻の民芸品と化している。かつては農村周辺で容易に採取できたコシダが、今は山の中まで行かないと採れなくなってしまったので、編める人はいても材料を集める人がいないらしい。

なにしろ素材となる葉柄が採取できるのは真夏の酷暑の時期、しかも藪の中に入り込んで胞子と枯れ葉の粉塵まみれになりながら、素材に適した成熟度の葉柄を厳選し100本採取してこなければならない。その労力の成果として作れる籠は1個。製造数がほぼゼロになってしまったのも無理はあるまい。

www.chie-project.jp

 

コシダを素材にした籠は、かつては西日本各地で作られていたようだが、どこの地域でも作成者は絶滅に瀕しているようだ。

fnakatomi.exblog.jp

www.taketora.co.jp

リンク先は広島県の「シダ籠」、高知県の「シダ編み籠」の紹介だが、いずれもデザインが沖縄のものと酷似している。どこかにオリジナルがあって一時期に日本各地に広がったがほとんどはすでに絶え、ごく一部の地域にのみ絶滅危惧の遺存種として残っている・・という可能性を考えているのだが、資料が乏しく真相は今のところ定かではない。