Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

遺影

 サギソウ「八月(はづき)」の実生後代、3系統。変異は潜性(劣性)遺伝。ホモ個体の性質は弱く、作出者が引退した後に維持できた人はいなかった模様。

 これらの個体と同じ変異遺伝子を持つヘテロ個体は、2024年春の時点では生存を確認しているが現在の状況は不明。いずれにしても現栽培者にとってヘテロ個体はただの並サギソウにすぎず、実生して後代を育成するという発想は無いようだった

 

 こちらは上3系統と別個体。

「八月(はづき)」系の典型的な花は、この画像のように萼片が2枚で、2枚の側花弁が唇弁化した「2蝶咲き」の花になる。(希に、上から2つ目の画像のような「3蝶咲き」になることもある)

 しっかりした花粉があり、奇形化してはいるが柱頭もある。子房がある程度まで発達していて、交配母体にもできる可能性を秘めていた。

 ここからさらに交配を進めて体質強化していけば、普通に育てられる品種を作ることも可能だっただろう。栽培可能地域にお住まいの方は、現存しているヘテロ個体だけでも保存栽培して、将来につなげていただきたいとは思う。だが「鷺草保育会」の顛末を見る限りでは、一般趣味家は1000人いても(略

 

 ちなみに「八月」変異は発現が不安定で、見て判るように個体ごとに、あるいは花ごとに違う形の花が咲く。

 株に力が無いと唇弁と側萼片が欠落して、萼片が1枚、花弁が2枚のみの珍妙な花になることもある。

 

 こちらは「唇弁」が3枚、萼片が見当たらない。向かって左の唇弁が緑色を帯びているので、これがおそらく萼片である。 萼片・花弁が合わせて3枚の「珍妙な花」が総唇弁化しているっぽい。なんというか、もはやバグの多重合成という感じである。ぱっと見た印象は獅子咲き品種の「飛翔」に似ている。

 

 参考までに、比較用の獅子咲きサギソウ「飛翔」実生後代の画像。こちらは萼片が花弁化・唇弁化する変異個体。形質発現は安定しており、誰が育てても同じような花が咲く。

 真祖の「飛翔」は通販で入手可能。飛翔系の交配種も趣味家の間で何種も流通しているので、その気になれば入手可能。

「飛翔」の獅子咲き変異は顕性(優性)遺伝なので交配親に使えば50%の確率で獅子咲き個体が得られる。ただし片親に「玉竜花(4倍体)」などを使用した3倍体実生は稔性がものすごく低い。(ゼロではない)

 

関連記事