Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

純白紫点花の始祖

Amitostigma lepidum(Ponerorchis lepida) 'Saotome'

from Tokunoshima island, Kagoshima pref. Japan.

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オキナワチドリ「早乙女」(さおとめ)。伝・徳之島産の純白紫点花。遺伝形式はウチョウランやイワチドリの純白紫点花と同じ。(単遺伝子変異、劣性遺伝)

オキナワチドリの純白紫点花(野生選別品種)は、管理人が把握している限りではこの個体しか見つかっていない。現在流通しているオキナワチドリの純白紫点花は、すべてこの個体の子孫。育種上のブレークスルーになった始祖品種である。

・・が、色が白いという以外は普通の花なので見た目のインパクトに欠け、ごく一部の野生品種マニアしか興味をもたない。性質もあまり丈夫ではなく、栽培維持が易しいとは言い難い。そのため栽培者が引退する時に栽培品が引き継がれず、ひっそり消えてしまっているケースが多いようだ。まだ数人ほど所持者を確認できているが、いつ絶種してもおかしくない。

葯室と花粉塊は黃色。花粉色についての説明は下記参照。

 

outcross seedling of 'Saotome'

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こちらは「早乙女」の後代実生、花粉塊は黄色。花軸から赤味が抜け、萼片は緑色で涼しげな色調。こういう品種は「早乙女」の遺伝子を使わなければ作出できない。

「早乙女」を見た時、何も説明しなくても「おお、これがオキナワチドリ育種の七大始祖の一つ!」と大喜びするようだと変態 通な趣味家の領域に達している。

ちなみに上の画像の花はウチョウランやイワチドリの白地一点花とは似て非なるもので、交配時の遺伝形式がまったく異なる。良花の出現率は低く選別育種はウチョウランの何倍も面倒臭い。