Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

南アフリカ少雨地域の植物図鑑

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 必読かどうかは人によると思うが、自生地画像オンリー、オールカラー350ページの本が一般書として出版された事に驚く。「ブルー○ス」の珍奇植物特集とか、植物輸入業者が自費出版している薄い写真集がそのままの濃さで辞典ぐらいの厚さになって殴りかかってきたような本。(ただし各写真のサイズが小さいので写真集として見た場合は迫力に欠ける)

 おそらく多肉植物ブームに乗っかって出されたのだろうが、多肉だけでなく球根、樹木、動物などの画像も多く、どちらかというと「異世界フィールド図鑑」という感じである。多肉マニアよりも、むしろ動植物全般に幅広い興味をお持ちの方に向いている気がする。

 残念ながらラン科(地生種のみ)の記事は2ページに留まる。日本国内で栽培成功例がある種類がいくつか含まれているが、いずれも栄養繁殖が難しく栽培品として現存しているかどうか疑問。

 そもそも南アフリカ産地生蘭の多くは菌依存性が高い。下画像(全部ラン科)も種子であれば入手できない事もなかったりするが、フラスコ培養は可能でもビン出し後は菌共生栽培以外では生かしておくことが困難なランが含まれている。

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 なお、生態や分類については興味深い記事が多数あるものの栽培に関する記事は皆無。要するに園芸書ではない。純真な若者が写真を眺めて「こんな珍奇な植物が世の中にあるのか!」と感動して視野を広げるのが正しい読み方である。

 ちなみにラン以外の植物は日本国内で栽培・増殖されている種類がかなりの割合で含まれており、その一部は普通に通販で買えたりする。逆に言うと、この図鑑に載っていて日本で入手できない種類は園芸的に見て何か問題があると疑ったほうが良い。ほとんどの場合「誰も育てていない」のではなく「先人が試してみたが割が合わなかった」植物である。

 ・・いや、それに関しては挑戦するなとは言ってない。山盗り親株の購入は駄目だろうが、種子の個人輸入なら持続的利用の範疇だろう。まあ苦労を買うようなものだと思うが、若い時の苦労は(無責任発言)

↓ 参考記事