Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

オキナワチドリ純白地・二条点

seedling in 2019.

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オキナワチドリ実生初花。純白地・二条点。

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花粉塊は黄色。

特にインパクトのある花でもないし、だから何?で終わりである。イワチドリで非常に良く似た品種が量産されて広く出回っているので、多少ランに詳しい方であれば珍しくも何ともないと思われることだろう。はい終了。今回はこれで解散。

 

・・が、花粉塊が黄色、とか言われても普通の方には何が言いたいのか理解できないと思うので、一応説明しておく。いわゆるチドリ類には「純白地」と「酔白地」という品種がある。両者は外見的にはほとんど区別がつかないが、遺伝的にはまったくの別物である。そのため両者を交配すると遺伝性を打ち消し合って、子供はすべて普通花(ピンク地)になる。だから交配育種をする場合には、両者を混同しないよう注意する必要がある。

区別をつけるポイントは、純白地の花粉は純黄色、酔白地の花粉は黒灰色をしているという点である。これはチドリ類の交配育種をする上での基本知識で、ブリーダーにとってはきわめて重要なチェックポイントとなる。(逆に言うとブリーダー以外には何の意味も無い無駄知識である)

でまあ、言いたいのはそういう事ではない。オキナワチドリでは酔白地品種はそこそこ発見されているが、純白地の野生個体は管理人の知る限りでは、いままでに1個体だけしか見つかっていない。一般流通していないので、野生ランマニアでも実物を見る機会はほとんど無いはずである。

また、イワチドリっぽい花型というのは野生オキナワチドリには存在しない。固定した二条点の品種というものも存在しない。そして、今はオキナワチドリを育種しているブリーダーも存在しなくなっている。

そういう知識をふまえた上でこの画像をもう一度見ていただきたいわけである。(念の為申し上げておくが、合成画像ではなく実在する個体である)

しかしながら、こういう解説というのは書いていて非常にむなしい。専門用語を使った駄洒落を用語から説明して理解してもらうようなもので、判らない人にむりやり理解させても面白くは感じてもらえないだろう。そういう普遍性の無いネタはスベるからやめとけ、という話なのである。

一応、画像記録として残しておくが、だから何?と言われるのは判っているので、実生活で他人に見せる事は一生無いと思う。

 

wild form seedling, origin from Okinawa island, Japan.

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ちなみにこちらが野生型(沖縄個体群標準タイプ)。普通の「ラン好き」程度の方だと、管理人の経験的にはどんな個体を見せても反応は一緒である。どんな花でも等しく美しい、という感性ならそれはそれで素晴らしいのだが、興味が無い種類はどれでも同じに見えてしまう、という事らしいので激しく萎える。品種の違いが判るどころか、イワチドリやウチョウランと区別ができない方のほうがむしろ多数派に思える。

結局のところ、ニッチな話題を興味の無い方に語るのがそもそも間違いなのだろう。昭和の頃であれば情報に飢えている「濃い人」にしかこういう話題は届かなかったのだが、最近はほとんど興味を持っていない薄っすい人に幅広く情報が届いてしまう。情報発信すると、情報など最初から求めてもいないらしき方から予想外の反応が返ってきて、あー普通の方はそういう見方をするのね、と心を折られる。

というかイワチドリやウチョウランのほうが衆人受けは良いのだから、反応されることだけが目的の方はオキナワチドリなど栽培するだけ無駄である。業者の量産チドリを購入して、お花が咲きましたーとSNSに乗せて、「いいね」を稼いだあとはそのまま枯らしていれば良い。野生採集個体でなければ消費栽培で何の問題もない。興味を持っていると口では言っておられる方々も、ごく一部の方を除いて真面目に育てようとまでは思っていないという現実を、この20年で嫌になるほど見せつけられた。もう十分だ。今後は栽培に関する発信も極力減らしていこうと思っている。