Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Ranunculus extorris var. lutchuensis

in Habitat. Okinawa island,Japan.f:id:amitostigma:20160308102642j:plain

ヤエリュウキュウヒキノカサ。沖縄本島の自生地にて。

以前にも何度か紹介しているが、沖縄諸島特産の冬緑性の多年草。水田のあぜ道のように、大型草本が無く適度に表土が攪乱される環境に自生する。かつては農村で普通に見かける雑草だったらしいが、今は水田がサトウキビ畑に変わり、農道は舗装されて絶滅寸前の超希少種になってしまった。

 

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上画像は趣味家から分けてもらった選別個体で、花弁が丸く弁数も多い。標準個体は5弁花だが、沖縄本島の個体群では自生地画像を見ても判るように、6弁以上になる花が混じる。個体によっては10弁近くまで増えることもある。

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こういう個体を選別交配していけば多弁花を固定化することは可能だろうが、園芸種のラナンキュラスと比較されれば勝負にならない、というか比較対象にすらならない。資産6兆円のビル・ゲイツと管理人、どちらが金持ちか比較するようなものだ。

山野草としては小型で完全八重咲きのダイザキヒキノカサがあるし、外国種のヒメリュウキンカ山野草的で品種のバリエーションが素晴らしい。同属に実力派がたくさんいて、園芸という土俵に上げても勝ち目が無い。本種は郷土の野の花として、あるがままの姿を愛でていればそれで良いと思う。

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性質自体が弱い草ではないので、栽培すればいくらでも殖える。しかし見てのとおり草姿が間延びするので鉢栽培では鑑賞的に仕立てるのが難しい。外気と直射光にガンガン当てないとすぐにモヤシ化するし、花弁がボロボロ落ちて散らかるので室内観賞に向かない。家庭菜園の隅にでも植えて勝手に茂らせておくのが妥当だろうか?

ちなみに自家不和合なので一株だけでは種子ができない。選別個体を数か所から入手していたのだが、同一個体が殖やされて出回っていたらしく、相互交配してもまったく種子ができなかった。あちこちに声をかけ、10年ほどかかって別の選別栽培株がようやく入手できた。異株を隣に置いたとたん虫媒で勝手に結実するようになり、こぼれ種で雑草化した。いやもう、これのどこが絶滅危惧なのかと(苦笑)

丈夫な草でも自然ではもう生きていく場所が無い。そこが野生種保護の最大の問題なのかもしれない。