Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

New Book

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沖縄産イネ科ハンドブック。欲しい方は絶対欲しい、いらない方はタダでもいらないという二極分化した反応の出る書籍。管理人は前者。

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いやもう見るからにつまらない。誰が買うんだこんな本。誰得っていうか俺得。こういうニッチな本が出てしまうところが日本すげー。

前書きにある著者のイネ科に対する愛の叫びはたいへんよく理解できる。まあ同調するのは少々難しいのだけれど。

Spiranthes sinensis var.sinensis

from Okinawa island, Japan

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 ナンゴクネジバナ沖縄本島では本土のネジバナと同様、芝生に生えている。一般的には花弁の先端のみがほんのり赤く染まる、いわゆる「口紅咲き」の個体が多いが、画像個体は比較的濃色で本土のネジバナとほとんど区別がつかない。

 違いは春咲きである事と、花茎が無毛である事だが、まあ画像だけ見て判る人はほとんどいないだろう。ちなみに沖縄本島では単に「ネジバナ」と呼ばれている。

  現在、我々は歴史の転換点に立ち会っている時期なのだろうが、これから世界がどのように変わっていくのか見当がつかない。もし叶うのであれば、あと10年くらい生き延びて変容を見てみたいとは思うのだが。 

Amitostigma lepidum

2020 seedling

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オキナワチドリ実生。

市販の実生苗には、こういう妙な個体も混入していた。

そういうのを探してきて、交配親にして遊んでみるのは楽しかった。

 

過去形である。市中にある実生苗はそのうち消える。維持増殖していた人はもういない。

Amitostigma hybrid

Ponerorchis lepida X Shizhenia pinguicula

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オキナワチドリ X 中国大花チドリ。

某業者が販売している交配種。

 以前は両親ともAmitostigma(旧イワチドリ属)だったが、現在はオキナワチドリはPonerorchis(ウチョウラン属)に統合され、学名もAmitostigma lepidumからPonerorchis lepidaに変更された模様。

 中国大花チドリのほうは独立属として分類しなおされ、Amitostigma pinguiculaからShizhenia pinguiculaに変更されたらしい。

 現在の分類基準に従えば、この交配種は属間交雑ということになる。外見的には両親の中間型で、花粉親と比較して特に優れている部分も見当たらない。遠縁交配なので近縁種交配のような雑種強勢は生じず、むしろ性質は虚弱になっている。ほぼ不稔なので交配育種をここから先に進めることもできないし、まあ「面白い」という以外にとりたてて推奨する要素は無い。

 じゃあ何でそんなものを紹介するのか?と言えば、要するにネタ切れである。当ブログは基本的に地生蘭の紹介記事を書いてきたのだが、近年は野生採取株の画像を貼るのは盗掘品を手に入れて自慢している低脳、という風潮になってきたので、地生蘭に関しては貼る画像がもう無いのである。

シンビジウムやパフィオペディルムのような一部の長命種、あるいはシランのような例外的強健種を除けば、地生蘭のほとんどは長期栽培が不可能に近い。

 野生での平均寿命は数年程度で、種子で世代更新しながら生きているもの(ダイサギソウ、スズムシソウ等)や、あるいは個体寿命自体はそこそこ長いが、ウイルス耐性が乏しくて健全に長期栽培することが難しいもの(エビネ、サギソウ等)、すぐ腐るので環境などを厳密に整えないと生かしておく事自体が難しいもの(シュスラン系、コリバス等)など致命的な難点のある種類ばかりで、常人が何十年も生かしておけるような地生蘭はきわめて少ない。発見後100年以上も栽培下で育て続けられている品種のある、セッコクやフウランとは訳が違うのである。

 突き詰めれば地生蘭の栽培とは、栽培者の思い出作りのために野生個体を消費する行為である。生息域外保全の役には立たないし、園芸の発展にもつながらない。そんなものを育てている奴は、あえて言おう、カスであると。(<管理人含む)

 そう言うと、いや自分はきちんと栽培しているし、殖やしてもいる、と反論なさる方がおられるかもしれない。だが、残念ながら地生蘭に関しては「栽培できている」というのは妄想にすぎない。それは時間や金や労力を湯水のごとくつぎこんで、死に至る植物の延命を続けているだけである。

 栽培者個人にとっては、気が済むまで育て続けられればそれで満足だろう。だが、時間や金や体力が尽きて、延命が続けられなくなった時に栽培品はすべて消滅する。そんなもの社会にとってはクソほどにも意味は無い。

 まあ、商業生産苗であれば枯らそうが煮て食おうが勝手にやれば良い。が、どこでどうやって採取されたか不明の絶滅危惧種を消費栽培している行為を、わたくしの趣味でございますと胸を張って言えるのか? そんなものをSNSで自慢してどう思われるか考えた事も無いとか馬鹿の極みじゃねえの? と、いきなり見ず知らずの人から突っ込みが入ってくる時代なのだよ今は。

 そんな時代だからこそ、希少植物を入手した時はせっせと増殖して苗を世に広めていこう、とか思う若人がもしいるなら言っておく。

無駄だ

 栽培が面倒臭い植物は、生かしておくだけでも膨大なリソースが必要になる。今の時代、誰にもそんな余裕は無い。植物園であろうが民間であろうが、金にならぬ事にとりくむ余裕はこれっぽっちも無い。例外的に金になる、育てられもするパフィオなどはとっくに業者が殖やしているが、それ以外の種類は普通の管理では育てられないので業者や植物園は手を出さない。普通でない方法なら育てられはするが、金や労力の点で永続できない。

 ボランティア的に苗を生産して配っても、最初から真面目にやる気が無い栽培者は3ヶ月以内に腐らせる。そこそこ真面目に育てようとする人でも栽培できるのはせいぜい数年。10年育て続けられる人はまずいない。30年たてば栽培を続けているのはあなた一人になる。頑張って何百本の苗を供給しようとも再生産する人はゼロ、どれだけ多くの人に配っても全部消費されて終了である。年間300万本が生産されるウチョウランが全部消耗品にされている状況を考えれば、数百本の苗など焼け石に水、餓えたサバクトビバッタの群れの中に花を植えるようなものである。

 それでもなお、自分は地生蘭を育ててみたいのだ、という方がいれば、管理人にそれを止める権利は無い。だが、もし育てている奴を見つけたら、容赦なく突っ込みを入れさせてもらう。もし公開するならば、それなりの覚悟を持つがいい。

何?あんたにも突っ込みを返させてもらう?

 もちろんそれは自由だ。他人を撃っていいのは、撃たれる覚悟のある者だけだ。そういう場合に備えて、このブログはクリック一つで記事を全削除して逃亡できるよう設定してある(笑)

関連記事 ↓

 

Aeginetia indica

in Okinawa island.

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ナンバンギセル沖縄本島にて。

草刈りしたあとにススキの根元から咲いていた。葉緑素を持たない完全寄生植物で、ススキなどの大型イネ科の根から養分を吸収して開花する。

あらかじめススキを鉢植えにしておいて、その根元に種子を播けば栽培下で開花させることが可能。鉢物としても出回ることがあり、ネット通販で入手できる。

ただ、開花時期以外は地下生活しているので、蕾が出ている状態でないと生きているのか死んでいるのかわからない。開花結実すると枯死してしまうので毎年種子を播かないと絶えてしまう(実際には種子は何年も地下で休眠しているようなので、一度播くと複数年は生えてくるようだが)こともあり、長期維持は意外と面倒臭い。

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濃色、口紅咲き、純白花などの変異系統も選別されているようだが、真面目に保存栽培している人が限られるので変異コレクションするのは難しいようである。

 

Farfugium japonicum var. luchuense

from Okinawa island, Japan.

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リュウキュウツワブキ奄美大島沖縄本島西表島に分布するツワブキの渓流型変種。つまり増水時に葉がちぎれたりしないように、葉型が小さく細くなったツワブキである。

斑入りや葉変わりなどの選別個体が栄養繁殖されて流通している。ただし専門コレクターがあまりいない植物なので、まとまった品種を一堂に見る機会はほとんど無い。

普通のツワブキと連続した変異があり、交配すると中間型が出てくるそうなので同種と考えるべきかもしれない。が、自生環境が渓流だと大葉種が流され、通常の場所だと小型種が淘汰されてしまうので、その結果として別物に進化しつつあるらしい。

キク科の通例通り自家不和合で、育種が面倒なので意図的に新品種を作っている方はほとんどいない模様。

 

Far.japonicum  #1 in Okinawa island

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こちらは参考までに普通のツワブキ。ちょっと丸弁。

 

Far.japonicum #2 in Okinawa island.

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 こちらも普通のツワブキ。やや細弁。個体差が大きいが、花物としてはあまり注目されていないようである。