Aster asagrayi var. warker

from Yonaguni island, Okinawa, Japan.

f:id:amitostigma:20191121111330j:plain

ヨナグニイソノギク。(環境庁の資料ではヨナ「ク」ニイソノギクだが、現地の地名発音がヨナグニなので当ブログでは意図的にヨナグニと書いている。)

平成31年度に特定第一種国内希少野生動植物種に指定されたため (栽培する事に規制は無いが)手に入れる場合は申請許可済の業者から入手しないと違法になる。

画像個体は管理人がまだ若かった頃に入手して、自宅で継代維持しているもの。法律施行前の入手なので法的な問題は無いが、許可業者以外に譲渡すれば違法になる。

 

f:id:amitostigma:20191121111346j:plain

交配して種子を採り

 

f:id:amitostigma:20191121111403j:plain

育苗すれば容易に殖やせるので、余剰苗は認可業者に押し付ける予定。

 

これが民間でできる生息域外保全・・などとSNSなどでドヤれば騙される馬鹿が一定数いると思う。言っておくが、趣味家の栽培がこの種の保護に役立つ可能性はゼロである。なぜかと言えばヨナグニイソノギクは栽培不可能種だからである。

まあ管理人は殖やしている。が、それは採算度外視で、思い入れだけで面倒臭い維持栽培を毎年継続している狂人だからできる話であって、普通の人には一時的栽培しかできない。

この種は短命な多年草で、開花すると高率で枯れる。まだ元気なうちに挿し芽などで未開花苗を作っておけば維持できない事も無いが、キク科としては異常に発根率が低いので本気にならないと栄養繁殖苗が作れない。

弱った親株は捨てて種子で更新するほうが簡単だが、自家不和合、つまり一株だけでは種子ができないので採種するためには複数株を栽培しつづける必要がある。親株はそこそこの大きさになり水分の吸収・蒸散も激しいので、それなりの大きさの鉢か、あるいはプランター栽培でないと育成しづらい。つまり非常に場所をとる。

ところが霜に当てると枯れるので、本土であれば冬期にある程度の保温が必須になる。ビニールハウスにプランターをいくつも持ちこんでまで栽培したいような草ではないので、手を出しても冬の置き場所に困り、翌年にはそのまま管理放棄するのが普通である。

沖縄であれば露地で大量栽培も可能だが、前述のように種子更新しないとあっさり絶える。与那国島でも植栽で栽培を試みた例があるが、自然更新で苗が育つような場所ではなかったため1年で消滅した。

さらに嫌なのが、同属他種とものすごく簡単に交雑することである。沖縄本島のイソノギク自生地の近在で栽培したら虫媒で野生個体群にも遺伝子汚染をひきおこす。(10kmぐらいは花粉媒介されるとも)

そういう場所から離して栽培していたとしても、圃場に同属のダルマギクとかユウゼンギクとか栽培していたら採種更新するのはアウト。もし栽培するなら農業用防虫ネットで厳重に隔離するしかない。アスター属で本種より鑑賞的に優れた種類はいくらでもあるので、そういうものを無視して本種限定で苦労しながら維持栽培する、などというのは客観的に見て異常者の所業である。

よって本種は栽培不可能、地域によっては栽培禁忌ですらある。

野生植物には、こういう感じで「苗をもらってきて一時的に育てるのは簡単だが、継代しながら真面目に維持栽培しようとすると栽培者の命が削られる」という植物が稀ではない。

園芸種でも、たとえばパンジー。苗を植えて花を楽しむだけなら栽培スキルもその種類に関する知識背景も不要。園芸ジャンルの中では入門種中の入門種とされている。だが、業者と無関係に自分一人で10年維持しろ、と言われたらあなたには可能だろうか?

パンジーは耐暑性が乏しく、日本のほとんどの地域では1年草扱いになる。つまり種子が採れなければ維持できない。種子がはじけて消えてしまわないうちにきちんと採取する、という作業だけでも実際にやってみるとものすごく労力を要する。

しかもパンジーは他花受粉でないと弱化してくる。純系ではなく遺伝的に雑駁なので、そういうもの同士が自然交雑したら観賞価値の低い妙な花色の個体がゾロゾロ出てくる。狙って人工交配して採種、育苗、実生選別して次世代の親株を選抜して・・というのを業者任せにせず自分でやったら時間的・労力的、何よりも栽培面積的に破綻確定である。

要するに「パンジーが簡単」というのは面倒な部分を育成業者に丸投げして、美味しい部分だけをつまみ食いしているから成り立つ話である。自分一人で10年維持、という条件なら寒蘭のほうがはるかに簡単だろう。

そういうバックヤードの苦労をな~~~んにも判らずに「素人はパンジーでも育てていればいい」とか、寝言は寝て言えという感じである。本来ならば「素人は寒蘭でも育てていろ」が正しかろう。

「本来は難しい」部分を毒抜きした上澄みだけが園芸雑誌に載る。それを見て「消費者」が飛びつく。まあ生産者がバックに控えている一般園芸はそれで良いのだろうが、非生産品を扱っている方が、面倒な部分をガン無視して「栽培できます」と言っているのを見た時には辛いものがある。結局のところ、希少種は全部法律で縛って栽培規制していくしか無いのだろうと思う。