from Kunigami village, Okinawa island, Japan.
画像だと純白花に見えるが、実物は花弁がうっすらとピンクに発色している。花序は無毛。
形態的にはナンゴクネジバナなのだが、ナンゴクネジバナならば冬緑性のはずである。オキナワチドリと同様に夏は休眠し、秋に出芽してきて3月頃に開花する。今頃に咲いているのはおかしい。狂い咲きだろうか?
本土産ネジバナには秋咲き品種がある(*1)というが、ナンゴクネジバナにも秋咲き品種があるのだろうか?
近年の研究によると、ネジバナには複数の隠蔽種(いんぺいしゅ。従来の分類では同一種として扱われてきたグループをよく調べてみたら、別種に分けられるべきものが混じっていたと判明したもの)があるらしい(*1)。逆に園芸的には別種扱いされているヤクシマネジバナと普通のネジバナはDNAで見ると同種の範疇だそうだし(*1)、熊本産の無毛で初春咲きの「ナンゴクネジバナ」がDNA解析でネジバナの無毛個体群と判定されたり(*2)、外見から生物学的な種名を確定することは難しいようだ。
*1:https://www.jstage.jst.go.jp/article/plmorphol1989/17/1/17_1_31/_pdf/-char/ja
*2:http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/90005098.pdf
画像個体は、なよなよとした貧弱な草姿であり「台湾産ナンゴクネジバナ」と呼ばれる個体に類似していた。
http://www7a.biglobe.ne.jp/~flower_world/images/Spiranthes%20sinensis/DSC05927.JPG
「台湾産ナンゴクネジバナ」2011年4月、明治大学で展示された小田倉正邦氏の栽培品。鉢内に段ボールが入れてある。台湾の某洋蘭業者が東京ドームの蘭展で販売したものだそうだ。ほっそりとした葉は性質として固定しており、栽培時に徒長したわけではないという。
ちなみに台湾ではネジバナも人工増殖の対象らしい。「綬草」で検索していただくといろいろ情報が出てくる。
沖縄本島産のナンゴクネジバナとは外見的にかなり差異が認められるが、いずれにしても早春咲きの系統であり、秋に咲くことはない模様。
ちなみに香港産がこちら。沖縄と同様、開花期は春。
どこまでが同種で、どこからが別種なのか調べるほど泥沼にはまりこむ。
芝生などにくっついて遠方から運ばれてくることもあるので、今回のように変な個体を見つけても在来なのか移入なのか、基本種なのか変異個体なのか判断できない。「たかがネジバナ」ではあるが、奥を覗いてみると底しれぬ深淵が続いているのである。