Nervilia nipponica propagation in flask

bloom in flask > autopollination > mature seeds > autocultivation

f:id:amitostigma:20171121112129j:plain

昨年12月に紹介した沖縄本島産ムカゴサイシンの続報。菌依存性が高く、鉢栽培は困難なのでフラスコから出さずに継代培養しているが、今年は5本が開花してそのうち1本が結実した。

鉢栽培が可能な台湾ムカゴサイシンNervilia taiwaniana の場合は人工受粉しなければ結実しない。本種も今まではフラスコ内で結実したことは無かったので、結実には交配作業が必須だと思っていた。しかし振動か何かの影響で自動受粉することもあるらしい。だがラン科の場合、自家受粉だと果実ができても無胚種子しか入っていない事がよくある。果実が膨らんでいたのには気がついたが、「想像妊娠」だと思ってそのまま放置していた。

先日、ひさしぶりにフラスコを見てみたら親株の根元に白い粒々が見えた。コンタミ(雑菌侵入)かな?と思ってよく見たらプロトコーム(菌依存段階の幼若実生)だった。どうやら有胚種子ができていて、それがこぼれて勝手に発芽していたらしい。

ムカゴサイシンは果実が急激に生長して短期間で裂開するが、少し早めに採果すると種子が未熟すぎて発芽しない。かといって様子を見ていると変色などの前兆がないまま、いきなり果実が裂開して種子が消えて無くなっている。採取にベストなタイミングは数日程度、その時期を正確に見きわめて培養を開始する必要がある。ベストな期間に採果できても種子が消毒に弱く、1果実あたりの種子量も20粒に満たないことが多いので播種の技術的難度は高い。加えて好適培地はどういう組成なのか情報が皆無。過去に何度も培養に挑戦したがことごとく失敗、入手する機会がほとんどない貴重な種子を無駄にするだけで何の成果も得られなかった。神経を使う繊細な作業を繰り返しても無駄に終わり、吸い取られていく時間と労力にメンタルをゴリゴリと削られた。ようやく数個体の実生が得られた時には、やっと培養条件を解明できた!と力が抜けたものだ。

それが今回は放置状態で勝手に発芽していて、自分が苦労した時より数多くの実生ができている。非常に複雑な気分である。

親株は結実で体力を消耗したようで、新球根は一応できてはいるものの非常に貧弱。菌共生させていない普通の鉢栽培であれば、おそらく開花結実させると衰退消滅すると思う。まったくもって栽培向きではない。

まあ、殖やして需要のある植物でもないので園芸的には無意味な話だが、こういうこともあるという報告として書きとめておく。