Stenoglottis hybrid.

Stenoglottis (longifolia X fimbriata)X self.

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通称ムレチドリ。もともと「ムレチドリ」は南アフリカ固有種Stenoglottis longifoliaの和名だったようだが、最近では同属のSt.fimbriata(ウズラバムレチドリ)との交配種、およびその後代がムレチドリの商品名で大量に流通するようになっている。ガーデンセンターなどで山野草として普通に売っているので、どこかの業者が量産していると思われるが詳細は把握していない。(情報をご存じの方はご教授いただけると嬉しいです)

画像個体は管理人が試験的にムレチドリを自家受粉で交配し播種育苗したもの。稔性は低かったが、このように種間交配種の自家交配で苗が得られるケースはどちらかと言えば珍しい。

原種のロンギフォリア種は美麗かつ強健で育て易いが、エビネ並みの大型種で栽培に場所をとる。一方でフィンブリアタ種は小型で山野草的だが暑さにはそれほど強くなく、沖縄などでは栽培が難しい。両者の交配種はそこそこ小型で強健、良いとこ取りの良交配で入門者におすすめできるランの一つ。

沖縄だとほぼ常緑だが、本土の場合10℃以下になると落葉休眠するようだ。ただし耐寒性はそれほど高くはなく、落葉するような環境では生育は良くないと聞く。本土でも太平洋側の温暖な地域だと無加温で野外栽培しているという報告を散見するが、低温になるほど水分管理の失敗でまるごと腐る確率が高くなる。スパルタ栽培だと、あまり長生きはしないと思う。

本属は地下にネジバナのような多肉で水分の多い紡錘根がある。この根を、茎をごく一部つけて本体からはずし、植えつけておくと新芽を出してくる。キク科の園芸植物ダリアを塊根分割で殖やすような感じである。通常の分株に加えて、この「根伏せ」でも繁殖できるので増殖は容易。

しかし一方で多肉根は古くなると非常に腐りやすくなる。大株になると中央の根塊がごっそり溶けて病原菌の温床となり、元気に育っていた株がいきなりスッポ抜けて駄目になることも珍しくない。植え替え直後の小苗だと古根が無いのでそれほど気にする必要はなく、放任に近い状態でもトラブルなく育ってしまう。その時点で簡単だと思って油断し、そのまま植え替えをせずに育ててしまうと突如として調子を崩す。症状が現れた時点では地下部が手のほどこしようが無い悲惨な状態になっている、というのがよくあるパターン。毎年きちんと植え替えて腐りかけた古根を取り除き、株分けして一株のサイズを小さくしておくのが長期栽培のポイントになる。

短期的には栽培容易と言えるランなのだが、愚直に世話を続けて長い年月育て続けている人を探すとほとんど見かけない。商業生産品なので消費栽培上等ではあるのだが、そういう状況になんともいえず哀しい気持ちになるのは管理人だけだろうか?