Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Musa balbisiana?

in Okinawa island.

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熱帯アジアが原産とされる、食用バナナの元となった原種品種群の一つ。沖縄では繊維採取用に栽培され、イトバショウと呼ばれている。ただしイトバショウというのは繊維用バナナの総称で、別種のMusa liukiuensisも同じくイトバショウと呼ばれる。

栽培者も用途が同じであれば特に区別せず栽培しているようで、「イトバショウ」で検索すると両者の学名が入れ違っていることも珍しくない。

画像の種類はフィリピン・インド原産のbalbisiana種のように思われるが、マレーシア原産のacuminata種と酷似していて正直よく判らない。管理人は専門外なので種名については断定を避けておく。ネットではイトバショウはMusa acuminataであると紹介されている例も多いが、(この記事も含めて)内容を素直に信用してはいけない。

花茎の基部に近い部分が雌花、つまりバナナになる部分で、先端に近いほうに雄花(画像参照)が咲く。原種balbisianaの実も食べられないことはないが、しっかり追熟させないとエグ味があり、本土のアケビの実のように果肉が薄くて大量に種子が入っているため通常は食用にしない。

原種バナナは自家不和合なので2系統以上が植栽され、なおかつ受粉昆虫(あるいは受粉コウモリ、受粉鳥)がいないと結実しないようだが、果実用種では単為結実品種(受粉しなくても実がなる)が発見され株分けで各国に広まったようだ。ちなみに現在日本で流通している生食用バナナは、ほとんどがacuminataの3倍体(=種無し)大果・単為結実品種らしい。

 

Musa spp. in Okinawa island

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こちらは通称「島バナナ」と呼ばれる食用種。

明治時代に、ハワイ(推定)から小笠原諸島を経由して導入されたものだという。acuminataの2倍体・単為結実品種であるという説明を見たことがあるが、裏付けがとれる文献をまだ確認できていない。

3倍体品種の「普通のバナナ」は耐寒性がやや劣るため沖縄本島では美味しい実が採れないらしく、矮性品種の「三尺バナナ」を除いて栽培はほとんど見かけない。一方で島バナナは家庭果樹としてしばしば庭や畑に植えられている。熟した実はいわゆるモンキーバナナと外見的にほぼ区別がつかないが、上品な酸味と濃厚な甘みがあり格段に美味。残念ながら病害虫に弱く、生育が遅いうえ台風で倒伏しやすいため商業的に量産するのは難しく、需要に追い付いていないようだ。最近はネット通販でも人気商品らしいが、買うのを躊躇する値段である。

ちなみに近年、ミカンが栽培できる地域なら屋外越冬できる半耐寒食用バナナの苗が国内流通するようになり、沖縄でも徐々に栽培が広がってきている模様。ネット情報だと「実は小さいが酸味があって甘みも強く、食感がモチモチで独特」だそうだ。通販ではもう見かけるようになりはじめたが、まだ購入したことは無い。

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