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Habenaria linearifolia

Terrestrial orchids Habenaria

seedling from Nursery.

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オオミズトンボ。

昨日のオオスズキサギソウ(仮称)と同じ場所で栽培されていた。某業者さんが北関東産の個体から実生増殖し、数年前から販売している系統だそうだ。

沖縄では言うまでもなく栽培不可能だが、本土であっても育成は非常に面倒らしい。

 

性質が繊細で、栽培地の気候が合わない場合にはしだいに弱って枯れる。

環境が合っても栽培用土が適当だと枯れる。

用土が最良でも日照管理が不適切だと枯れる。

日照管理がベストでも肥料が合わないと枯れる。

肥料が適切でも病虫害で枯れる。

病虫害対策をしても台風で折れる。

天候対策をしても水湿管理が狂って枯れる。

完璧に世話していても気を抜いた時に枯れる。

枯れずに殖えていても、そのうちランの個体寿命が来て同時に育ちが悪くなってくる。

個体寿命が来なくても個人栽培の管理力はいずれ尽きる。

誰かに託そうとしても、恐ろしく面倒な草を育てるのは普通の人には無理。

世話できなくなったら三日で壊滅、一人で何十年育てても何も残らない残せない。

 

栽培が難しいので、増殖して販売された事例はほぼ皆無ではなかろうか。少なくとも平成になってから一般向けに商業流通したのは、上記業者さん(鈴木吉五郎翁のお弟子さん)の実生生産品だけだと思われる。

 

オオミズトンボの自生地である湿性草原は開発で消滅しやすく、開発されなくても地下水低下による乾燥化や、植生遷移で生育できない環境になってしまうことが多い。しかも栄養繁殖率が低く、個体寿命もそれほど長くはない。基本的には実生で個体更新しながら存続している植物なので、実生が生育できる環境(表土が攪乱された半裸地)が無くなると個体群が維持できない。おまけに近親交配させると近交弱勢がおこり、稔性が著しく低下するので個体数が一定数以下になると加速的に衰退していく。

保護されている自生地でも、すでに個体群を維持できる限界数以下になってしまった場所があると聞いている。現状では各自生地が日本各地に遠く分断されてしまっているので、虫などが花粉を運んで遺伝子交流が行われる可能性はゼロに等しい。

 

ということで、あらためてオオミズトンボの保全栽培について考えてみる。近い将来の国内絶滅にむけてまっしぐらの状況ではあるが、2016年現在であれば複数系統の親個体を見つけることは(至難ではあるが)研究者などのコネを総動員すれば必ずしも不可能ではない。栽培されている個体に野生オオミズトンボの花粉をかけて実生を育成すれば、少なくとも次世代での近交弱勢は回避されるだろう。丈夫な苗がたくさん作れるかもしれない。

が、その先のビジョンが何も見えてこない。自生地そのものの存続が怪しいのだから、自生地への植え戻しが検討しづらい。栽培難度が高すぎて、園芸植物化して残すにも無理がある。近交弱勢を永続的に回避するには数十株単位で保存栽培せねばならないが、大量栽培は個人には労力的に難しい。大勢で分散管理しようとしても「まともに」育てられる人は全国でも数える程度で、栽培グループ結成は絵に描いた餅。植物園などに期待しても、栽培担当は委託された造園業者だったり、バイトのおばちゃんだったりするので、ランのことに異常に詳しい指導技官でもいない限り育成できるような技量はない。(理事長と看護婦と検査技師がいて医者のいない大病院、みたいな状態)

当面、生産苗をリリースした業者さんが種親として、まとまった個体数を維持栽培しておいてくれることを期待するぐらいしか思いつかない。その先のことは・・はてさて。

ま、生物の保護などというものは、財団でも作って活動するレベルでやらない限り、どうにもならぬものではあるのだろう。