読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Pectabenaria 'Unregistered'

 Pecteilis radiata X Habenaria linearifolia

f:id:amitostigma:20160725104116j:plain

サギソウ×オオミズトンボ(別名サワトンボ)某植物園のバックヤードで撮影。沖縄では自然気候下で栽培できない植物の一つ。

サギソウとミズトンボの交配種であるスズキサギソウ(Pectabenaria Yokohama: Pecteilis radiata X Habenaria sagittifera)に酷似するが、花粉親が異なる。和名が無いようなので、オオスズキサギソウ、略してオオスズキと仮称している。

 other plant.

f:id:amitostigma:20160725104126j:plain

上記と同一果実からの姉妹株。個体によって唇弁の広がり方や曲り方に若干の個体差がある。

サギソウ×ミズトンボは、 昭和時代に有名だった園芸店、横浜・富岡「春及園」の園主、鈴木吉五郎翁が大正時代末に人工交配で初作出し、前川文夫博士の著書「原色日本のラン」(昭和46年初版)において「スズキサギソウ(Habenaria Yokohama)」という名前で紹介された。その後秋田県などで自然交雑個体が発見され、その個体の増殖品&最近になって再交配された人工個体が、きわめて少数ではあるが現在も流通することがある。

サギソウ×オオミズトンボも同様に、大正時代末に鈴木氏が作出している。

 

from 'Egret Orchid Growers Society Proceedings Vol.2 : 1/3/1965

crossbreed by Kichigoro Suzuki.

f:id:amitostigma:20160725071259j:plain

こちらの白黒写真は鷺草保育会・年会報「鷺草」第二号(昭和40年3月1日発行)収載「サギソウ交配」鈴木吉五郎氏の記事からの引用。本文も一部転載。

「あの完成された姿からはより以上のものは簡単には出まい悪口を云えば出来すぎた姿態だから、むしろくずして変化を求めたらどんなものかと(中略)はや四十余年前ともなろう、サワトンボとミヅトンボを幸い常時手持ちして居るから利用した、これが両者より何か変なものが作出されたが、(中略)不稔と見え孫を求めることは出来ずに居る。」

今の若い方は鈴木吉五郎という名前を聞いたことが無い方のほうが多かろうが、ハエトリソウの「鈴木系」とかスズチドリ、スズキスミレ、トミオカスミレ、アマナシラン(Bletilla Yokohama)、富貴蘭の「春及殿」などなど、いろいろな植物の作出・選別に関わっている方である。というか、山盗り消費園芸が当たり前、ウチョウランの栽培法すら確立されていなかった時代に野生ランの人工増殖&園芸化を提唱し、しかも実際に鉢播きで難物のランの実生を次々と成功させ、今なお商品として通用する「山草としての美意識」を追求した品種を残している先駆性と栽培センスは尋常ではない。

なお、鈴木吉五郎氏の評伝についてはこちらのサイトが詳しい。

リンク:安庵様「蘭と人の話」「す」の項

http://www.hat.hi-ho.ne.jp/kerrysan/bujin13.html

が、鈴木氏のオオスズキは鈴木氏が亡くなると絶えてしまったようだ。

その後、昭和の一時期に、再交配されたオオスズキを長野のマッド 非凡な育種業者、O川氏が培養増殖して販売していたことがある。

from 'The Wild Orchid Journal 03/1993'

 f:id:amitostigma:20161113194607j:plain

こちらの画像は月刊誌「自然と野生ラン」1993年3月号、O川氏の記事からの引用。それなりの個体数が販売されたようだが、これらも現在生き残っているという話は聞いたことがない。オオスズキサギソウ(仮称)が平成になってから流通しているのはネットオークションなども含め、一度も見たことが無い。

前述の現存個体は最近出回っている実生生産オオミズトンボを親に使い、再々交配されたものだそうだが、2016年現在、一般流通はしていない。いずれにしても栽培品としてはそう長くは残らないと予想する。ハベナリア類はウイルス耐性が乏しいので、実生更新できないと系統維持が難しいからだ。

O川氏の解説文によると

「稔性はほとんど無く、交配させたものの内の100莢近くの中から、1粒の種子のみ発芽しました」

との事で、ほぼ不稔と考えて良いかと思う。

なお、オオスズキのセルフ実生ではなく、サギソウを戻し交配したF2個体が増殖され販売に至ったように管理人は記憶している。園芸雑誌だったかカタログだったか、どこかで写真公開されていたと思うが、どこで見たのか記憶が定かでなく調べきれていない。お判りの方がいらっしゃればご教授いただきたい。F2個体も消息が絶えて久しく、おそらく現存していないと思われる。