Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Pieris koidzumiana

from Okinawa island, Japan.

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リュウキュウアセビ、植栽品。沖縄固有の低木で、本土のアセビP. japonicaの亜種とされることもある。従来は奄美大島にも分布していることになっていたが、奄美産のものは2010年にアマミアセビとして独立した。

もともと個体数が少なく、野生個体は園芸目的で採取されて絶滅したとも言われている。幸いなことに栽培が容易で、挿し木などで殖やされて庭木として大量に売られている。ある程度の耐寒性を有するため、本州南部(太平洋側)であれば庭植えで普通に育つそうだ。本土のガーデンセンターなどでも売品を見かけるそうなので、栽培下の個体数は最盛期の野生個体数よりも多いだろう。

ただ、普及しすぎて来歴が判らなくなっており、従来はアマミアセビと混同されていたこともあって希少種としての系統管理はまったくされていない。時には交雑種っぽい個体にリュウキュウアセビという名札がついていたり、交配アセビ琉球」(品種名)などというのもあるので混乱する。

植物園などで栽培保存されていることも珍しくないが、どこから採取されたどういう血統の個体か調査が進んでいない場合が多いようだ。増殖に使われた原木が何本あったのか外見的特徴だけで判断するのは難しいし、大量に栽培されていてもDNA解析してみたら全部同一クローンだった、などという事があっても驚かない。

本来であれば公的機関が系統解析して個体番号をつけて民間に配布し、官民協働で生育域外保全栽培を進めていくというのが理想ではある。

・・が、公的機関には栽培に詳しい人材がおらず、植物園の現場管理も指定管理団体に丸投げ。希少植物保全は予算を引いてくるための方便で、本音のところではゼニにならない雑草・雑木にかかわっている余裕など今の日本には無いのが実情。

民間は民間で種名識別ができない人のほうが多数派で、栽培中にラベルが入れ替わっていてもまったく気づかなかったりするので、うかつに管理を依頼できない。実生で根元に生えてきた異種交雑個体のほうを殖やして、ラベルの名前をつけて配布してしまうような趣味家も珍しくはない。

というか、これはどう見ても別種だろ!と指摘しても首をかしげているような人であっても、世間一般の基準で言うと名前を知っているだけで「植物に詳しい人」だったりする。一般人に任せるとニラとスイセンの苗を間違えて配り出す、という認識から始めないと一般普及指針は作れないのである。

現実には保全ネットワークの構築はいろいろ難しい部分が多いようだ。

*2022年追記。

・・と思っていたら管理人が知らなかっただけで、リュウキュウアセビに関してはある程度まで保全対策が進んでいる模様。そしてアマミアセビでは「普通の人」でも参加できるように創意工夫し、上記にあげた問題をすべて対策する形で官民協働の保全事業が実施された。当記事の内容が不見識だった事をお詫びする。