Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Viola stoloniflora

from Okinawa island, Japan.

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沖縄本島産オリヅルスミレ。野生では絶滅(ただし同種とも言われる類似個体が再発見されている)で、発見グループにたまたま栽培上級者が参加していたので増殖維持された。学者先生だったら押し葉標本にして終了だったろうし、育てたのが半可通の栽培家でも枯らされてアウトになっていた。一株しかない採集植物が保存栽培された事例は、少なくとも日本ではほとんど類例が無い。まあ、スミレは閉鎖花で種子繁殖する特異な植物なので、一株だけになっても近交弱勢が問題にならないという利点も大きいのだろうが・・

増殖初期には限られた植物園にだけ配布され、一般人が実物を見る機会はほとんど無い幻のスミレだった。近年は民間に分与された株からの増殖が進み、スミレマニアの栽培棚にはほぼ行きわたったと思う。(そのあと維持できているとは言っていない)

本来はアジア亜熱帯域の亜高山に自生しているグループらしい。沖縄のものは氷河期に沖縄が大陸と陸続きの時期にやってきて温暖化で取り残され、山間の渓流沿いの冷涼な場所に最後の一株が生き残っていた模様。

暑さ寒さに弱いので栽培は難しい。高湿度を保って20~25℃前後に維持すれば爆殖するが、10℃以下になると生育が止まって衰弱し、28℃以上になっても急激に弱る。東北以北で冬だけしっかり加温して育てるのが良いのだろうか。

幸いなことに沖縄は海洋性気候なので、ヒートアイランド化が進んだ東京都心部などよりも夏の夜温が低い。郊外であればクーラー無しで生活できるぐらいなので、沖縄でも栽培場所によっては冷房設備無しで夏越しできないこともない。

とはいえ生存限界に近い気温ではあるようで、5鉢のうち4鉢は溶けて枯れるのが普通。冬のうちに頑張って5倍に殖やせれば何とか維持できる、という感じ。

夏に冷房温室に収容すれば楽勝だそうで、暑さが最大の問題であることは間違いない。試した事は無いのだが、当地ではクーラーの効いた部屋でLED照明を使い、テラリウム栽培するのが正解なのかもしれない。