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亡き師匠を想う

'The Wild Orchid Journal' 02/1989

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37年前の雑誌を引っ張り出してみた。この号では、今は亡き師匠が撮影した沖縄本島産オキナワチドリの野生選別個体の数々が紹介されている。

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上の画像は雑誌から引用したものだが、当時はまだ銀塩カメラだったので小さな花の撮影は恐ろしく大変だった。よほど興味を持っている人以外は写真など撮っていなかった時代なので、ピンボケ写真であってもこの頃の画像は貴重。

収載品種は、残念ながら斑入り個体「磯の白波」を残してすべて絶種しているようだ。むしろ40年近くも保存栽培されている「磯の白波」のほうが非常識ではある。

沖縄本島の個体群は花の地色が白に近く、上画像のような色の濃い花はきわめて稀。この個体が絶種してしまった後に自生地を再探しまくったが、同レベルの個体は結局見つけられなかった。(現在では沖縄本島の自生地は開発や植生遷移で壊滅に近い状態になっており、標準花ですら簡単には見られなくなっている。沖縄本島で変異個体を見つけるのはもう無理だろう。)

 

・・でまあ、しかたないので師匠の手持ち株の中から比較的色の濃い花を選んで交配させてもらい、選別育種して似たようなものを作ろうと試みた。しかし色調は多因子遺伝なので思うようには結果が出ない。濃色×濃色で淡色花が出る事も珍しくない。

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結局、師匠の存命中には成果を出せず、この程度まで色揚げするのに20年ほどかかってしまった。暇ですか馬鹿ですか。

ウチョウランやイワチドリであればこの程度の色は珍しくもないし、ウチョウランに至っては黒花というジャンルまで育種が進んでいる。それゆえこの花を見せても誰も驚かない。「ああそう、赤っぽい花もあるのね」で終了。仮にネットオークションなどに出してもサムネイル画像だけ見て素通りされるだろう。我ながら、やっている事の無意味さに苦笑する。

管理人があの世に行った時には、最後まで応援してくれた師匠に見てもらって「フラー(馬鹿)だねぇ」と大笑いしてもらいたいと思っている。