Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Habenaria hybrid

Habenaria medioflexa X Hab. dentata 'Hakuho-Jishi' 

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タイ産のハベナリア・メディオフレクサに沖縄本島ダイサギソウ獅子咲き(「白鳳獅子」系統)を交配したもの。

当ブログに「ハベナリアの栽培」で検索して来る方が時々おられるので、栽培のポイントをあらためて書いておく。

その前に一つクエスチョン。シランがマイナス5℃まで耐えるとする。一年のうち8ヶ月は平均気温10℃以下、15℃以上になる季節は2ヶ月しかない北極圏の住人が、最低温度マイナス5℃の「温室」を用意した。さて、シランは元気に育ってくれるだろうか?

熱帯産、かつ生育サイクルが一年周期の植物を日本で育てると、それと同じ状況になる。要するに日本の自然気温が生育適温に比べて低すぎて、一年の大部分の間、自然気温以上に加温しないと正常な生育が望めない。充実した球根を植えつければ一年目はよく育って開花もするし、数年ぐらいは育つこともあるだろう。しかし毎年痩せてそのうち枯れてしまう育て方を「栽培」と言うのかどうか。

東南アジア産のハベナリアの場合、28℃以上の温度で半年以上が基準。栽培書には冬期に最低10℃を保つ、とか書いてあるが、それは耐寒限度であって、まともに長期維持できる温度では無い。できれば休眠中でも20℃以上が望ましい。

低温越冬だと翌春の芽出しが遅れて生育が年ごとに悪化する。高温種の代表であるハベナリア・カーネアなどは生育期間が10ヶ月ほどもあるので、毎年のようにタイあたりから導入されているが日本国内で安定して長期栽培できている事例は聞いたことがない。

まあ生物には例外も多いので、分布域が広い種類だと、分布中心のものは育てられなくても北限(南限)の個体群だと特別な設備が無くても栽培できる事もある。しかし寒さで枯れなくても、ハベナリアは頑健さに欠け、分球率が低く、ウイルス耐性も乏しい。それらをクリアしていく対策も無いわけではないが、その成果は必要となるコストや労力に見合うのか。言い方を変えれば、そこまでして育てたいですか?

さんざん育ててみた上での結論。ハベナリアは本質的に栽培に向いていない。特殊な栽培条件や増殖技術を用意できない限り、遅かれ早かれ消費栽培で終了する。長期的コレクション栽培には不向きな属だと申し上げておく。