Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Spiranthes aff.cernua

from North America.

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 北米産白花ネジバナ。画像個体は30年以上前にアクアリウム素材として国内導入されたもので、ずんぐりとした花穂で背丈が伸びにくい系統。

 日本のネジバナは個体寿命が短く、数年連続して開花すると腐って枯れてしまう事が多い(ただし斑入り品種などをベテランが細心の注意をはらって維持している例外的事例も無くはない。また親株が枯れても、種子が発芽しやすくそのへんで雑草化したりするので系統維持は難しくない)のだが、北米種には丈夫で長生きする系統「も」あるようだ。

 北米産ネジバナはさまざまなルートで繰り返し輸入されているが、入荷するたびに植物体の大きさや花弁の形、香りの有無、葉の形、増殖率などが微妙に異なる。栽培してみると異様に巨大化したり、花の咲く時期が違っていたり、国産ネジバナ並みに短命なものもあったりして、少なくとも園芸上は同じ種類として扱うには無理がある。

 北米には複数種が分布しているようだが花の色が全部同じなので、ネットで画像検索して調べても管理人には見分けがつかない。(そもそもネット情報だと正確に種名同定されているかどうかも疑問)

 日本に輸入されている系統群が同一種内の変異の範疇なのか、あるいはDNAレベルで別種として分類すべきものなのか皆目判らない。

 画像系統はアクアリウムプランツとして入荷した系統だけに過湿に強い。まるごと水中に沈めても(生育は極端に悪くなるが)枯れないぐらいなので、腰水で管理することも可能。

 ただし腰水に浸けっぱなしで用土表面からの灌水が少ないと、鉢底の嫌気化した部分に根が伸びなくなって鉢内の特定の深さで根が横にトグロを巻くようになる。水湿は好むけれど鉢内に酸欠・停滞水が溜まっている状態は嫌うようだ。

 この系統のように丈夫なものは盛んに栄養繁殖するので、趣味家同士で株分けしあって長期維持されている場合「も」ある。しかし人気がそれほど高い植物ではないので増殖普及はされていない。理屈から言って古い系統ほど栽培維持が容易な優良個体のはずなのだが、同じにしか見えない植物(実際には複数種が混じっている)がいくらでも通販で購入できてしまうため、特定の系統を意識的に探して入手しようとする人はほとんどいないだろう。

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 上画像は植え替え時に地下部を撮影したもの。一番左側が親株で、開花後に茎が枯れて倒れたあと基部から複数の新しい新芽が伸びてきている。さらに親株の3本の根の先端(!)からそれぞれ新芽が伸びてきて、右側に向かうにつれて新個体の生長が進んでいる。右端の芽はもう少し根が伸びれば切り離して独立株として扱える。

 このように「この系統に関しては」どんどん栄養繁殖するので「真面目に管理すれば」増殖は容易。(手抜きをするとわりと簡単に作落ちする)

 ちなみに寒さにはそれほど強くないようで、本土では霜に当てないように室内保護が原則となる。しかし一部の地域では北米スピランセスが野外に移植or投棄されて野生化している事例が複数報告されている。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiribunrui/66/1/66_0661-12/_pdf

mainichi.jp

 そのため日本在来種以外のネジバナ属は属指定で特定外来生物になる可能性もある。本種に限らずアクアリウムプランツは非常に野良化しやすいので、くれぐれも野外逸出させないよう注意していただきたい。