Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

オキナワチドリの生産・販売苗をお探しなら

最新交配品種の画像はこちら

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 当園は日本で唯一、オキナワチドリの生産・販売をしている専門ナーセリーです。数十年以上も前に採集され、現在も栽培下で維持増殖され続けている旧銘品を栽培保存し、自生地が開発等によって消滅してしまった野生系統の増殖普及活動をしております。さらに人工交配による園芸改良を試み、毎年新しい品種を作出生産しています。オキナワチドリの苗をお探しの際はぜひ当園の通信販売をご利用ください。

 

・・・などという広告を出している業者はこの世に存在しない。まあ、それに近い在庫の業者は存在しているが、通販リストに載せておらず直接問い合わせる必要がある。また当サイトとはまったく無関係である。検索で探して勘違いなさった方がいらしたら申し訳ないが、スマホでちょこちょこ検索した程度で、旧銘品の苗がホイホイ見つかると思ったら大間違いである。パソコンで大量の情報を表示させて、あふれる情報の中から当該業者を探し出して問い合わせる根性・情報探査能力がない方は、すみやかに入手を諦めていただきたい。

 と、切り捨てるのも不親切な気がするので、多少の情報は書き記しておく。あらかじめ申し上げておくが、当ブログの管理人は業者ではなく販売もしていない。「欲しいです」などとコメントをいただいても、きっぱりお断りするだけである。自分で探すほどの興味は無いけれど、もらえるなら欲しいです、とぬかすクズにくれてやる餌は無い。(などと、性格破綻者が上から目線でマウントしてきております。不愉快ですねこんな失礼なブログからは早く立ち去りましょう)

 オキナワチドリの栽培はいろいろと面倒臭い。100人が育てれば99人は枯らす。イワチドリやウチョウランの栽培経験が無い方が扱ったら、まともには育たない。まともではない作落ち栽培で良いのなら「簡単」ではあるが、オキナワチドリよりも育てがいのある花はいくらでもある。好き好んで面倒なものに手を出す必要は無い。

 まあ「ウチョウランの段ボール蒔き」と言われて意味が理解できるのみならず、「何度も開花するまで育ててますが、それが何か?」と答えるような頭のおかしい変態さんであれば、好き好んで面倒な方向に行きたがるかもしれない。しかし、あなたがそういう異常性癖の方でないのなら、もうこれ以上読んでも得るところは無い。はい終わり終わり、いいから早く立ち去(略)

 最初からただの遊びでやっていて、末永く共に暮すことなど考えてはいないのならば園芸生産品のランを買えば良い。生産品ならば使い捨てにしても、生産者にお金が回って新しい苗が育てられていく。一方で何の知識も無い方がたまたま見つけた盗掘苗を買い、増殖することもなく食いつぶして終了すれば、将来に残せるものは荒廃した自生地のみ。小遣い稼ぎができた盗掘屋はまた山を荒らしに行く。

 そう言って苦い顔をしていると、盗掘品をお買いになられた方が「業者が売ってるのは全部増殖品でしょ?」とか「俺の金で買った花をどう扱おうが、お前に文句言われる筋合いは無い」とか、おっしゃってくださるのである。どうしても育てたいなら商業増殖個体をお求めになれば? と言うと、そんなものどこにも売ってない、という言葉が返ってくる。

 どこに売ってるか教えるのは簡単だが、欲しくて一所懸命に探して入手したものでなければ大事に育てたりはしない(断言)。そもそもオキナワチドリの性質をよく知っているなら、育てにくく枯れやすい野生採取苗を購入したりはしない。そんなものを買い求めるのはド素人か人格異常者のどちらかなので、いずれにしても対話するに値しない。

 素人にはもっと優しく指導しろ? オキナワチドリを売っている界隈をうろついているような素人は万年素人であって初心者では無い。異論は認めない。

 キラキラした生活の彩りをSNSで発信したいだけならば、買った球根を植えておけば1ヶ月で開花するイワチドリと、半年間も世話をしないといけない(その間に適切に管理できないと悲惨な草姿になるので栽培者のレベルが見ただけで判ってしまう)オキナワチドリと、どちらが他人を騙しやすい「ファッションアイテム」であるか言うまでもない。だからこそオキナワチドリは一般普及していない。そんなものは育てるだけ時間の無駄

 とか言ったところで、もともと一般的な「園芸」は飾り捨て消費である。植物の命など意識した事もない方のほうが普通、と気付くまでかなり時間がかかった。育ててみたいという人はそれなりにいるが、長期的に維持している方はゼロに近い。

 枯れたら枯れた時のこと、そう思っておられる方に、そんな育て方では枯れてしまう! などと真顔で言っても嫌がられるだけである。

 そこまでしなくても育てられるでしょ、気にしすぎ、とヘラヘラ笑って取り合わなかった方が10年後になって「全部枯れたよー、オキナワチドリは難しくて駄目だねー」とか(以下自粛)

 しかし考えてみれば頑張って何十年も育てたところで、どうせ最後は全部枯らして何も残らない。だったら好きに育ててとっとと枯らそうぜヒャッホー。自分が楽しめればそれでいい! たかが草ごとき、消費アイテム扱いで何が悪い? あなたもそう思うだろう?

 現在、沖縄本島個体群は開発や植生遷移、台風被害などにより自生地点がものすごい勢いで消滅しつつあり、かろうじて生き残った個体は盗掘&消費栽培でとどめをさされている。遠くない将来に本島個体群は地域絶滅し、もう二度と見る事ができなくなるだろう

 本種は局所的にぎっしり固まって自生していることが多い(個体数が一定以下になると近交弱勢をおこして絶える)植物だ。そのため自生地がどんどん減少しつつあっても、たとえば3箇所ほど残っているうちは「まだ数百株も自生がある、絶滅危惧Ⅱ類相当」という扱いになる。

 ところがもともと攪乱地に生える植物であり、環境的に不安定なごく狭い場所にピンポイントで残っているにすぎない。「道路整備、台風のがけ崩れ、遷移、盗掘で畳一枚分しかなかった自生場所がまるごと消滅しました」が高頻度に発生する。

 それが3回おきれば「健全な状態で数百株あった」状況から唐突に「地域絶滅」に移行してしまう。植生変化が乏しい原生林内に広範囲に点在している植物とは消滅速度が異なる。

 ちなみにオキナワチドリの場合、地域個体群ごとの遺伝子調査が行われていない。奄美諸島の個体群ーー沖縄産とは明確な形態差があるーーがある程度残っているため、現時点では同種とみなされている沖縄産個体群は、地域絶滅が目前でも絶滅危惧保全の対象にしてもらえない。

 左が奄美タイプ、右が沖縄タイプ。(さらに九州島の個体群はこれらと多少異なる)九州島型 / 屋久島~与論島型/ 沖縄諸島型を同一条件下で栽培しても外見的な特徴が変わることはなく、ラベルを確認しなくても見分けがつく。園芸的にはキュウシュウチドリ、アマミチドリ、オキナワチドリと呼んで区別しても良いくらいの差異がある。

 余談ながら沖縄と奄美の「同種」とされてきた動植物の多くは、よく調べてみたら別種だった事がDNA解析によって判明しつつある。(このブログで紹介した植物ではオキナワ(アマミ)マツバボタンとかリュウキュウ(アマミ)アセビとか)

 最近までは、現在は消滅している自生場所から採取された本島各地産オキナワチドリを真面目に系統保存している趣味家がわずかながら存在していた。しかしその方々が次々と鬼籍に入ってしまい、その後に栽培後継者は現われていない。最後に残っているのが某業者がサンプル的に維持している、バックヤード在庫のみという状況。 

 本島産オキナワチドリの絶滅はカウントダウンに入った。しかしそれを誰も問題視しておらず、調査も保全もされる予定はまったく無い。

 園芸選別個体もレアな品種は紙媒体での記録が残っていないので、おそらく50年先には存在していたという事実すら忘れられていると思われる。

 今回の画像個体、「淡大点花」も報文や書籍に載ったことはおそらく一度も無い。これはイワチドリやウチョウランのピンク点花に相当するもので、単一遺伝子の変異による劣性(潜性)遺伝形質である。育種素材としてなかなかに興味深いのだが、見ての通り現状ではインパクトに欠けると言わざるをえない。そのため栽培したがる方は皆無に近く、園芸業者の在庫の中に混じっていても誰にも気づいてもらえず放置されている。

 こういう遺伝子資源が誰にも知られぬまま現在進行系で、ひっそりとこの世から消え続けている。そして自生地が壊滅しているため再発見はもう不可能。

 残念なことではあるが、管理人にできる事は何もない。ここで紹介しても興味を持って現物を探そうとする趣味家はいないだろう。そしてネット情報も長く残る記録とはなりえず、そのうち消えていく。なんとも寂しいことではある。

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*他のオキナワチドリの見本画像は最上段「オキナワチドリ」タグをクリックしてください

Scutellaria rubropunctata

from Amami island, Japan.

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アカボシタツナミソウ、紅一点花風。奄美大島産。

アカボシタツナミソウは屋久島から沖縄本島にかけて分布する、琉球列島固有種。耐寒性があり、本土でも強く凍結させなければ屋外でも越冬する。花がそこそこ綺麗で栽培も容易だが、栄養状態が良いと50cmぐらいにまで育って間延びするため、園芸的にはほとんど利用されていない。花の斑紋には個体差があり、ほとんど紫点が無くて白花に近いものからベタ紫に近いものまでバリエーションに富む。しかし特定の産地だけ見ると自家結実種子で殖え広がった同一系の個体群であることが多いらしく、個体数があっても全部同じような花だったりする。

画像は奄美大島産の系統と聞いているが、ネットで画像検索してもあまり見かけない配色である。まあ、良く見ないと気がつかない程度の変異なので興味を持つ方も少ないとは思うが、こういう微細な違いをチェックするのがマニアというものなのである。

 

in Habitat, Okinawa island, Japan.

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こちらは沖縄本島・東村で撮影した自生の標準的な個体。探せばいろいろなバリエーションがあるのだろうが、あまり本気で探したことがない。鑑賞的にはこちらのほうが上という気がしないでもない。

オキナワチドリ純白地・二条点

seedling in 2019.

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オキナワチドリ実生初花。純白地・二条点。

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花粉塊は黄色。

特にインパクトのある花でもないし、だから何?で終わりである。イワチドリで非常に良く似た品種が量産されて広く出回っているので、多少ランに詳しい方であれば珍しくも何ともないと思われることだろう。はい終了。今回はこれで解散。

 

・・が、花粉塊が黄色、とか言われても普通の方には何が言いたいのか理解できないと思うので、一応説明しておく。いわゆるチドリ類には「純白地」と「酔白地」という品種がある。両者は外見的にはほとんど区別がつかないが、遺伝的にはまったくの別物である。そのため両者を交配すると遺伝性を打ち消し合って、子供はすべて普通花(ピンク地)になる。だから交配育種をする場合には、両者を混同しないよう注意する必要がある。

区別をつけるポイントは、純白地の花粉は純黄色、酔白地の花粉は黒灰色をしているという点である。これはチドリ類の交配育種をする上での基本知識で、ブリーダーにとってはきわめて重要なチェックポイントとなる。(逆に言うとブリーダー以外には何の意味も無い無駄知識である)

でまあ、言いたいのはそういう事ではない。オキナワチドリでは酔白地品種はそこそこ発見されているが、純白地の野生個体は管理人の知る限りでは、いままでに1個体だけしか見つかっていない。一般流通していないので、野生ランマニアでも実物を見る機会はほとんど無いはずである。

また、イワチドリっぽい花型というのは野生オキナワチドリには存在しない。固定した二条点の品種というものも存在しない。そして、今はオキナワチドリを育種しているブリーダーも存在しなくなっている。

そういう知識をふまえた上でこの画像をもう一度見ていただきたいわけである。(念の為申し上げておくが、合成画像ではなく実在する個体である)

しかしながら、こういう解説というのは書いていて非常にむなしい。専門用語を使った駄洒落を用語から説明して理解してもらうようなもので、判らない人にむりやり理解させても面白くは感じてもらえないだろう。そういう普遍性の無いネタはスベるからやめとけ、という話なのである。

一応、画像記録として残しておくが、だから何?と言われるのは判っているので、実生活で他人に見せる事は一生無いと思う。

 

wild form seedling, origin from Okinawa island, Japan.

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ちなみにこちらが野生型(沖縄個体群標準タイプ)。普通の「ラン好き」程度の方だと、管理人の経験的にはどんな個体を見せても反応は一緒である。どんな花でも等しく美しい、という感性ならそれはそれで素晴らしいのだが、興味が無い種類はどれでも同じに見えてしまう、という事らしいので激しく萎える。品種の違いが判るどころか、イワチドリやウチョウランと区別ができない方のほうがむしろ多数派に思える。

結局のところ、ニッチな話題を興味の無い方に語るのがそもそも間違いなのだろう。昭和の頃であれば情報に飢えている「濃い人」にしかこういう話題は届かなかったのだが、最近はほとんど興味を持っていない薄っすい人に幅広く情報が届いてしまう。情報発信すると、情報など最初から求めてもいないらしき方から予想外の反応が返ってきて、あー普通の方はそういう見方をするのね、と心を折られる。

というかイワチドリやウチョウランのほうが衆人受けは良いのだから、反応されることだけが目的の方はオキナワチドリなど栽培するだけ無駄である。業者の量産チドリを購入して、お花が咲きましたーとSNSに乗せて、「いいね」を稼いだあとはそのまま枯らしていれば良い。野生採集個体でなければ消費栽培で何の問題もない。興味を持っていると口では言っておられる方々も、ごく一部の方を除いて真面目に育てようとまでは思っていないという現実を、この20年で嫌になるほど見せつけられた。もう十分だ。今後は栽培に関する発信も極力減らしていこうと思っている。

New Book

published in 15/01/2019

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ゲッチョ先生こと、盛口満氏の新刊。琉球弧(奄美含む)の植物利用についての聞き書き集。初耳の情報が多く、植物に関する雑学集として秀逸だが、文章が主体で図録ではないため読み手を選ぶ。

内容的には知識収集属性のある人間ならばゾクゾクするかもしれないが、そうでない人間は開いただけで睡魔に襲われるだろう。まあ、「ゲッチョ先生の本」と言って理解できる方なら読んでも損は無いとは思うが、正直言って一般向けとは言い難い。

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内容的には上画像のような感じ。森林がなく開墾地が広がる喜界島では魚毒漁に樹木が使われることは少なく、畑雑草であるティンボッサー(キツネノヒマゴ:マゴではない)が使われていた、という話の挿絵部分である。喜界島ってどこ?なんで森林が無いの?魚毒漁って何?キツネノヒマゴなんて聞いたことないんだけど?などとという人には面白くも何ともないと思われる。

あーそうなんだ、と興味を持って読むためには地政学、文化史、植物知識などについての背景がよく理解できていて、その上ですっごく非常識な部分がある事に気づいて面白がるという行程が必要になる。本書では一般向けゲッチョ本のような背景解説は書かれていない。普通の人だと面白がる以前の段階で、書いてある内容の特殊性がそもそも理解できないと思う。

南方熊楠(1941年没)と聞いた時に、それが誰で何をした人か理解するだけでなく、彼が1901年から40年飼ってたペットの「お花」ちゃんはその後も2001年まで生きてて話題になったよね、などという話まで普通に出てくるような変な人であれば、この本をお奨めしておきたいと思う。

Habenaria unknown hybrid

probably,

Pectabenaria Rapee Sagarik (Pecteilis susannae X Habenaria myriotricya=medusa)

X Hab.??

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ラベル間違いで入荷した正体不明のハベナリア(おそらく交配種ラピー・サガリク)が自然結実していたので試しに播いてみた実生個体。

www.orchidroots.com

(追記:片親がmyriotrichaだとRapee Sagarik、medusaだとWow's White Fairiesとしてサンダーズリストに登録されている模様。しかし管理人にはmyriotricyaとmedusaの見分けがつかない。本当に別種なのか調べてみたが判然としない)

ハベナリア交配種は(ごく一部の例外を除いて)極端に稔性が低く、セルフ交配だとほぼ不稔になるので近くにあったハベナリアのどれかと虫媒交雑したのだと思うが、正確なところはよく判らない。

不稔に近い交配種でも正常稔性の原種個体の花粉をつけてやると、非常に低率ではあるがF2個体が作出できることがある。日本でも3元交配種がいくつか作出されているが、稔性が低いうえに着生蘭と比較すると種子量がものすごく少ないので、後代実生の量産が難しい。そのため数多くの実生の中から優良個体を選びながら交配育種していく、という洋蘭で常識的に行われている手法が、不可能とまでは言わないがあまり現実的ではない。

そうなると(言い方は悪いが)「交配してみたらこんなもんができました」という、血統書付きの犬のミックスを思いつきで作ってみました的な、ブリーダー視点で見た場合「目標が何も無い、好奇心で混ぜ合わせてみただけの交配」にならざるをえない。

というか、ミックス犬なら同種交配なので本気でやれば後代選別して新品種育成も可能である。むしろネコ科一代雑種のレオポンとかライガーを作って見世物にしています、野生種保存って何それ美味しいの、みたいな感じだろうか。

この個体は鑑賞価値から言うとかなりの優れ物ではあるのだが、個体寿命の短いハベナリアの場合、仮に良いものができても「はい枯れました終了です、実生もできないので次はありません」という流れになる。不稔でも栄養繁殖だけで半永続的に育てられるジャンルの交雑種(山野草系に限っても、良いものがかなりある)なら話はまた別なのだが、管理人としてはハベナリアに関しては交配種なんか作ってもなあ…と思ってしまうわけである。

そもそも今の時期に咲いている時点でおかしいと思っていただきたい。休眠してないのである。冬期最低25℃育成である。沖縄でも温室必須、こんなもんは熱帯アジアで育てるべきものである。本土で育てる?本土ならサギソウが育てられる気候なんだから素直にサギソウ育ててやがれこんちくしょー、無駄だ、こんなもん作っても無駄だ無駄だ無駄無駄無駄無駄だだだだだだだ、はーはーぜーぜー(興奮による息切れ)

最近は東南アジアでもいろいろな交配種を作っているようで、交配親を伏せて新種ハベナリア(正確には新種でなく新交配種と言うべきもの)として販売していたりする。ハベナリア交配種の大部分には母体として交配親和性が異様に高いHab.medusaが使用されているので、サギソウっぽい切れ込みのあるハベナリアを見た時にはメデューサ系交配種だと思って良いと思う。

Okinawan traditional Citron

left: Citrus unshiu / center: Citrus oto / right: Citrus depressa

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左はウンシュウミカン、つまり普通の蜜柑。中央は沖縄在来種のオートー。右は本土でも知名度が上がってきたヒラミレモン、沖縄名シークヮーサー

オートーは沖縄在来柑橘の中では一番ポピュラーな種類で、完熟すると寝ぼけた味になるので青切りの状態で流通する。甘味はそれほど強くなく、フレッシュなさわやかさ、若い香りを楽しむ青い果実である。(←危ない表現)収穫量が少ないことと、他の柑橘類に打ち勝つほどのインパクトがあるわけではないので、流通はほぼ沖縄本島周辺に限定されているようだ。地元で根強く愛されているローカルフルーツである。

シークヮーサーはDNA解析によれば日本原産の柑橘類・タチバナと、未確定の不明柑橘類の雑種らしい。最近は各種の加工品が全国流通しているが、生果実の状態で出回るのは沖縄だけだろう。(2020年追記。最近では本土のスーパーにも流通している模様)

十数種の選別品種があるらしいが、一括してシークヮーサーであり、品種ごとに区別された流通はない。ちなみに画像のように黄色くなるまで熟したものは生食用で、「黄金(クガニー)」と呼ばれる。

系統によっては普通のミカン並みに甘くなるようだが、小さくて種が多いため果物としての流通は多くない。青果実は本土のスダチのように料理に使ったりもできる。食べ残した種子を埋めて発芽してきた苗を畑の隅に植え、家庭果樹として利用したりする事もある。

粗放的栽培で品種をあまり気にしていない場合も多く、生産者によって母樹の個体差がかなりある模様。

 

Citrus tarogayo

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こちらは沖縄在来柑橘の中でも特に生産量が少ないものの一つ、タロガヨ。外見的には同じく在来品種のカーブチーとほとんど区別がつかないが、こちらのほうが果皮が薄い。

検索表はこちら。

甘味や酸味はオートーよりも淡白な感じだが、他の柑橘類のどれとも微妙に異なる独特の香気がある。それゆえごく一部ではあるが、タロガヨでなければ駄目だ!という固定ファンがいる模様。沖縄でも道の駅など、産地直売コーナーで少量販売されるだけなので、来沖された方が運良く見かけた時にはご賞味いただきたい。

こういう地元密着型の農産物は、栽培しているお年寄りが引退したとたんに消えてしまうこともある。少量でも良いから、今後も生き残っていってほしいと思う。

Paphiopedilum Leeanum?

in Okinawa island, Japan.

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鉢植えのパフィオペディルム。沖縄本島中部にて。

パフィオは詳しくないので間違っていたらご指摘いただきたいが、交配種リーアナム(Paph.insigne X Paph.spicerianum)ではないかと思う。パフィオ最強健種と言われる、沖縄家庭園芸の友である。

沖縄では画像個体のように、植え替えもされず放任栽培で大株になって咲いているのをしばしば見かける。気候的には地植えにしても十分いけるはずだが、さすがに花壇に植えている人はあまりいないようだ。まあ、本土における並シュンランぐらいの感覚ではなかろうか。

洋ランマニアには見向きもされない「駄物」だが、「丈夫」という特性は園芸的にきわめて優れ物ではある。しかし植え替えなどの世話は面倒臭いという非園芸人にとっては、いつまでも枯れずに生きている鉢物など、むしろ邪魔物でしかない。シンビジウムの鉢物を、花が終わったあとも大事に世話している人はどれぐらいいるだろうか?

花壇植えで過酷な夏を灌水無しで平気で越し、ノーメンテナンスで毎年咲く、というぐらい丈夫ならまた話は別だが、ラン基準での「丈夫」は一般基準では中途半端すぎて何の意味も無い。植え替えしないと枯れるなら、花が終わった時点でとっとと枯れて目の前から消えてくれたほうがいい。

世間は「粗雑に扱ってもすぐには死なない」という、一時的耐久力以上のものは求めていない。「大事にすればこちらの愛情に応えて頑張ってくれて、共に長く生きていける」という細く長い性質は必要ではない。ブラック企業が使い捨て社員を求めるように、少しでも安い値段でどんどん使い潰せるのが「良い花」だ。求められているのは気を遣わなくてもどんどん花が咲いて3ヶ月で枯れるガーデンシクラメンであり、ちょっと気配りが必要だけれど50年生きてくれるシクラメン・ヘデリフォリウムでは無い。

良い悪いの問題ではなく、古今東西そういう価値観のほうが多数派で、疑問を呈するのは社会不適合者のみである。大量消費のメインストリームに棹さす者は流され、智に働こうとすれば角が立ち、意地を通せば窮屈だ。今に始まったことでもなく、とかくこの世は住みにくいのである。