Amitostigma’s blog

野生蘭と沖縄の植物

Leucas mollissima var.chinensis

from Okinawa island, Japan.

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ヤンバルツルハッカ。沖縄本島産。画像個体は管理人の作場で雑草化していた個体で、若干日照が少ないため葉が長くて色が濃い。海岸で潮風と直射光に当たっている個体は黄緑色の葉で肉厚で毛深く、別種のような印象になる。

トカラ列島以南、沖縄から八重山諸島、台湾やフィリピンにまで分布する。国内では沖縄特産と言っても大きな間違いではない気がする。

名前からするとハーブの一種に思えるが、特別な香りは無い。ツル性でもなく、マノビハッカモドキとでも呼んだほうが正しい気がする。

花はそこそこ美しい感じなので、抜いて絶やすようなことはしていない。が、しいて育てるほどのものでもない。盗掘されて売られるような草ではなく、売品として見かけたこともない。しかし検索してみると育てている方がいて、世の中には酔狂な方がおられるものだと感心したりする。まあ人の事は言えないが。

最近はレアプラントがどうの、絶滅危惧種がこうのといった話に疲れてきた。そこらへんにある「普通の」花を静かに眺めて、お前も意外と綺麗だったんだな、とぼんやり過ごすほうが良くなってきたのは年のせいだろうか。

Pectabenaria 'Unregistered' F2

(Pecteilis radiata X Habenaria linearifolia) X Hab.linearilofia 

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(サギソウ♀×オオミズトンボ♂)× オオミズトンボ♂

当ブログで2016年に紹介した栽培場で、戻し交配によって作られた交配種。

 

sister plant 1

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姉妹個体。交雑種の後代なので形質にはバラつきが見られる。

 

sister plant 2

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姉妹株その2。かなりオオミズトンボに近い。

 

F1交雑個体にはほとんど稔性が無く、十数果を交配播種してようやく3本だけ苗が得られたとの事。とはいえ(言ったら悪いが)園芸的にはかなり中途半端なもので、わざわざ栽培するほどの魅力を感じない。まあ、実験的に作ってみたという以上のものではないように思う。

↓ 2021年追記

*2022年追記。追加交配で4本目の個体が得られたそうだ。

*関連記事は最上段 Habenaria タグをクリックしてください。

Kaempferia sp.

Kaempferia sp.

Wild collect,  from Chiang Mai, Thailand.

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タイ産のショウガ科バンウコン属の不明種。知人から2年前に分与してもらった株の初花で、仮称ケンフェリア・マイクロミニ。

当ブログはラン科&沖縄植物をテーマにしており、なおかつ野生採取個体は基本的に紹介しないことにしているのだが、本種に関しては萌えざるをえなかったので例外として載せてみた。

画像の状態は花が少ししぼみかけているようで、知人の話によると最上の状態では愕や花弁(実際には花弁に見えるのは形状変化した雄蕊らしい)がもっと伸び、よりランの花に似ているという。

バンウコン属は国内では薬草として加工品が若干出回っている程度で、鉢物はほとんど売られていない。というのも花は午前中に咲いて昼過ぎにはしぼんでしまい、普通に仕事をしている人間には咲いているのを見ることさえできないからだ。今回の画像はたまたま日曜日に開花したので撮影できたが、非常に花がつきにくく次に見られる機会はいつになるのか判らない。もしかしたらこれが最初で最後かもしれない。

この属には葉に美しい地模様の入る種類がいくつかあり、ピーコックジンジャー(クジャクショウガ)の名前で観葉植物として栽培されているものもある。タイなどでは庭園のグランドカバーとして植栽されることもあるらしい。だがどの種類も葉が手のひらサイズ以上になるようで、ラン科のコリバスといい勝負ができるような小型種があるという話は検索してもまったくヒットしてこない。

調べた範囲ではKaempferia gilbertii やangustifolia に似ているが、そちらは葉長10㎝を超える植物なので、本種とは少なくとも同一視はできない気がする。正確な名前がお判りの方がいらっしゃったらご教授いただきたい。

参考:タイおよびラオスの19種のケンフェリアの比較研究

https://www.researchgate.net/publication/318152948_Chromosome_number_variation_and_polyploidy_in_19_Kaempferia_Zingiberaceae_taxa_from_Thailand_and_one_species_from_Laos_Cytogenetics_of_Kaempferia?_sg=18LpShwPQySo5mcBhUMEU0qDK11r2fhFehEed6bj3xY6L5bFE6xoQ9v-SLCDqz5XXK6XDPw9Dw

性質にコリバスのような気難かしさはないようで、耐暑性にも問題はない。沖縄であればテラリウムなどで湿度管理する必要もなく、常温常湿で普通に栽培できるようだ。冬には落葉し、細根も枯れてほとんど根茎だけになって休眠するため越冬管理も楽である。本土でも冬期に室内で保温すれば、温室のない趣味家でもおそらく栽培できると思われる。またショウガ科の常識に準じて年に2倍か、それ以上に増殖する。ただし花付きが極端に悪いので一般園芸向きとは言いがたい。ちなみに植物体をいじると、ショウガ科特有の刺激感のある香りが感じられる。

Vanda lamelata

in Orchid show, Okinawa island.

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コウトウヒスイラン。沖縄本島の某蘭展にて。

コウトウヒスイランは台湾の紅頭嶼(こうとうしょ。現在の蘭嶼(ランユー)島)に自生する翡翠蘭(バンダ属の和名)という意味。日本国内で唯一のバンダ属と言われていたが、フウランがバンダ属に編入されたのでそういう意味での希少価値は下がった。

日本国内では尖閣諸島魚釣島に自生(していた)と言われる。しかし魚釣島では1978年に緊急時の非常食として持ち込まれた2匹の山羊が野生化して爆殖。低層から中層の草木は食べつくされ、木の皮まではがされて着生木の実生更新も止まっているらしい。領有権がアレでコレで上陸できないので正確な現状は不明。ヤギの駆除もできないため状況としては相当にシビアな模様。「尖閣 ヤギ」で検索するといろいろ出てくるが、政治色濃厚なサイトが多いのでリンクは省略。

過去に漁師などが持ち帰ったと言われる尖閣産コウトウヒスイランと言われる個体が沖縄で栽培されており、ごく稀にネットオークションで売りに出て恐ろしい高値に競り上がることがある。が、その個体が確実に尖閣産であるとDNA鑑定で確定されているわけではないようだ。

台湾ではさまざまな品種が大量に園芸増殖されており、素心や4倍体大輪、赤っぽいの緑っぽいの白っぽいの、バリエーションに富んだ個体が沖縄のガーデンセンターで普通に安く売られている。国内のラン縛りで収集しているコレクターでなければ尖閣産にこだわる意味は皆無である。沖縄では庭木につけて放置していても育つので、ほぼ本土のフウランの感覚で栽培されている。

Amitostigma lepidum seedling

seedling in 2018.

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オキナワチドリ実生。

数多くの実生の中から「ちょっと変わった花」を探して、検定交配して遺伝特性を調べ、次世代の新しい花を作出する素材として整理していくのが管理人の趣味。

とはいえ一般的な人は植物の種名を覚えることすら一苦労。種内個体差ともなれば「ヲタクの無駄知識」の範疇だろう。

切手マニアでなければ、切手を見て標準版とレア版を識別できる人はいない。それと同じことで、花の写真を見て標準花と非標準花の区別がついたら一般人基準ではすでにマニア、腐れヲタクの領域である。

まあ、仮にチドリ類に興味を持ったとしても、栽培が面倒で種苗供給体制にも難のあるオキナワチドリにわざわざ手を出す必要は無い。大量生産されているウチョウランの中から気にいった花を選んで、飾り捨てにしていればそれで良いと思う。

Asarum caudigerum

in habitat. Nakijin village, Okinawa island, Japan.

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オナガサイシン、別名カツウダケカンアオイ。自生地にて撮影。

自生地はハブの巣窟で、足場も悪いので案内人無しで行くと簡単に死ねる。

観賞価値はそれほど高くないと思うのだが、カンアオイ類はコレクターが多く、観賞価値にかかわらずコレクトアイテムとして盗掘されてしまう。本種のようにもともと個体数が少ない種類だと、採りつくされて自生地で見るのはもう不可能に近い。画像は案内人の方がガイドして見せてくれた個体だが、一日中散策してもこの個体以外には一本も見つからなかった。

栽培は易しいとは言えない(一般人基準)が、ベテラン栽培者であれば増殖も可能なので、ごく少数ではあるが栽培下での増殖品が流通する。なお、2017年に「特定」希少動植物種に指定され、販売許可証をもつ業者以外は販売・譲渡が禁止されている。

ちなみに園芸店では変異個体としてオナガサイシンの「赤花」や「素心」と呼ばれる個体も流通しているようだが、それらに関してはよく似た別種ではないかとの事。詳しくはこちらのサイトを参照。

ASARUM JAPAN オナガサイシン

Spathoglottis hybrid

in Okinawa island, Japan.

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 コウトウシラン系交配種。沖縄本島植栽。

 コウトウシランは一年を通じて生長を続ける熱帯性常緑地生蘭。20℃以下になると生長が止まり、長期間生長が止まっていると調子を崩して枯れはじめる。(ただし同属の一部には冬期に落葉休眠する夏緑種もあり、そちらは10℃程度あれば越冬できる)

 温度さえあればシラン並みに丈夫なので、熱帯域では花壇に植えて楽しむことができる。沖縄本島でも台湾あたりから輸入されたカラフルな種間交配種が画像のごとく庭先などに植栽されているが、気候的に越冬限界ギリギリなので葉が傷んだり、寒い年には枯れたりすることもある。

 八重山諸島あたりまで行けば楽勝で越冬できるようで、原種のコウトウシランSpathoglottis plicata が道路の法面などで雑草化していたりする。しかし沖縄本島だとコウトウシランはどちらかといえばレアな植物だろう。(野生状態で見つかっているが、自生ではなく栽培からの逸出と言う説が有力)

 沖縄の一般園芸店ではこの属のランは、交配種も含めてざっくりと「コウトウシラン」と呼ばれている。「コウトウシランは沖縄では普通に売ってるよ」と言われることがあるが、原種はわざわざ殖やす業者がいないので販売品をあまり見かけない。交配種ぽい個体にplicataのラベルがついて売られていることも珍しくはない。

 本土でも日本産野生蘭の全種コレクションを狙っているような方は原種コウトウシランの栽培を試みているようだが、真冬でも強光と高温が必要になるので本土では維持が難しいようだ。

 逆に言えば強光と温度が確保できるなら栽培に難しい点はまったく無いのだが、順調に育てば育ったで草丈1mに達してしまって室内温室などに収めるのは難しい。大型温室を持っていて冬期20℃で管理しているような洋蘭愛好家が、コウトウシラン属のランを一鉢くらい育てていることはよくあるようだが、この属を積極的にコレクションしている方は日本国内にはほとんどいないと思う。一方で熱帯アジア諸国の園芸ブログなどを見てみると、種間交配によって「うわー凄い」と言いたくなるような園芸品種群が育てられていることが判る。

 しかし沖縄は別として、栽培不適地である日本にはこれらの品種はほとんど導入されていないようだ。まあその気になれば個人輸入も可能ではあるのだろうが、本土でこういうものを栽培しても労多くして益少ない気がする。